住宅雑誌の編集長をしていると、いろいろな相談が舞い込みます。「いい工務店を紹介して」「雨漏りが止まらない」「この工事費は妥当か」――。いつもはこんな相談が多いのですが、先日、興味をそそる相談がありました。「購入した土地にある古い擁壁の耐震性に不安がある」というのです。
面白いのは、本人が「いつか売却する時、古い擁壁がマイナス評価になるんじゃないか」と心配していたこと。相談者は、これから建てる家を「資産」と捉え、古い擁壁が売却時の足かせになることを危惧しているのです。
これまで戸建ては「住宅スゴロク」のアガリと位置付けられ、「終の住み家」と言われてきました。しかし昨今の若い世代は、住宅を「資産」と捉え、買う時から売却時の評価を気にする傾向があるそうです。相談者は、まさにそのような建て主でした。
擁壁や地盤に起因する住宅被害の実例
日経ホームビルダー3月号の特集「地震が暴く危うい擁壁」では、熊本地震で発生した擁壁や地盤に起因する住宅被害の実例を集めました。特集の前半では、地盤被害の調査や分析から明らかになった対策の最前線をリポートしています。後半は、地盤の災害から家を守るため立ち上がった実務者の取り組みを伝えています。
地盤に起因する建物被害は、補修費が大きくなりがちです。数百万円あるいは、一千万円を超えるケースもあります。熊本地震の被害から、新築段階で対策を練ることの大切さが分かるはずです。この特集が、そのきっかけになることを願っています。
なお冒頭の相談者は、その後、工務店に相談して擁壁の調査に乗り出しました。技術面での不安に対応できるのは、やはり工務店。地盤や擁壁の専門家と連携して調査を取り仕切る工務店の姿は、相談者にとって頼もしい専門家に映ることでしょう。
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