11月10日号の特集は「安藤忠雄、次代につなぐ」です。創刊40周年記念特集として、44ページを割きました。私も一記者として参加して書いた渾身の特集です。
日経アーキテクチュアでは1人の人物にスポットを当てた特集はとても珍しく、在籍26年の私が知る限り、過去には丹下健三氏の特集しかやっていません。つまり、日経アーキテクチュアにとって安藤忠雄氏は、丹下氏と並ぶ大きな存在といってよいでしょう。
ではなぜ2016年のこの時期に、安藤氏なのか──。特集のリード(前書き)を引用します。
「安藤忠雄氏の実質的なデビュー作である『住吉の長屋』が竣工したのが、日経アーキテクチュアの創刊と同じ1976年。建築界という閉じた世界に向けてではなく、常に社会に発信する姿勢は本誌の40年に通じる。その安藤氏にロングインタビューを敢行。氏がこれまで考えてきたことやその活動の意味を、年表と照らしながら振り返ることで、社会との距離の縮め方を探った」
安藤氏へのインタビューは2回に分けて実施し、計5時間に及びました。
インタビューだけではありません。引用ばかりで恐縮ですが、本編冒頭の「プロローグ」のページはこう始まります。
「なぜ、安藤氏はアカデミズムの後ろ盾も、国家の後押しもなく『世界のANDO』となったのか。その最たる理由は、外国であっても氏の建築やメッセージが『一般の人に伝わりやすい』ということだ。
例えばアジアで安藤氏が講演会を開けば、時に万を超える聴衆が集まることもある。
一方、日本では、審査委員長を務めた新国立競技場の当初案が白紙撤回となって以降、安藤批判もくすぶっている。もちろん、そうした声があるのは健全なことだが、そのことによって建築家としての安藤氏のこれまでが否定されるものではない。
独学の安藤氏がなぜ世界で活躍できるのか。“色めがね”なしでその理由を探るため、記者は中国へと向かった」
この後、特集は中国・北京市に建設中の「Genesis Museum」や、上海市の震旦博物館」(コンバージョン)の現地リポートへと移ります。