10月27日号の日経アーキテクチュアは緊急特集を組みました。タイトルは「豊洲新市場“炎上”の教訓」です。

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 豊洲新市場は当初、11月7日の開場を予定していました。今ごろは「カウントダウン」のニュースがメディアをにぎわしていた頃でしょう。50年先を見据えた首都圏の基幹市場になるはずだった新市場は、存在しないはずの地下空間が明るみに出て、総批判を受けることになりました。

 一般メディアでは、誰が最初に地下空間を指示したのか“犯人探し”が続いていますが、日経アーキテクチュアが注目したのは、大型プロジェクトであれば誰にでも起こり得る「他分野とのコミュニケーション不足」の問題です。

 特集の一部を抜き出してみます。

 「足元では建築物に話題が飛び火しているものの、本質はアカウンタビリティー(説明責任)の不在に対する市民の不信感だ。発注者である東京都は真の受益者を見誤った。社会に向けた説明を怠ったことで、次々と発覚する問題が市民の怒りの火に油を注いでしまったのだ。

 発注者として、東京都にはどのような問題があったのか。少なくとも最前線で働く職員たちは、限られたコストと工期のなかで、最善の選択をしようと努めていたようにみえる。これは白紙撤回された新国立競技場の旧整備計画も同様だ。では、現場の努力はなぜ実らないのか。背景には建物に求められる要件が年々多様化、複雑化しているという現状がある」

 この特集を担当したのは、新国立競技場の問題も追い続けている江村英哲記者です。江村記者は新国立競技場の計画がいったん白紙になった経緯をこの問題に重ね、今日の大型公共プロジェクト全般にこうしたコミュニケーション不足が起こり得ると主張します。

 特集では豊洲新市場における「社会とのギャップ」の発生プロセスを、情報公開請求で独自入手した図面などを交えながら検証しました。