このコラムは特集を紹介することが多いのですが、今号(2017年10月26日号)は個人的趣味もあり、特別リポート「ロボットが現場を救う」を紹介させてください。

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 これは想像ですが、「建築」を仕事としている人のなかには、少年(少女)時代、“ロボット好き”だった人が多いのではないでしょうか。筆者も小学生時代、たまに付録に付くロボット製作キット欲しさに、某子ども向け科学雑誌を長年、定期購読していました(笑)。ロボットを開発するというロマンは、未来を描くという点で建築をつくるロマンに似たものを感じます。

 …と、本題からどんどん遠ざかりそうなので、特別リポート「ロボットが現場を救う」に戻りましょう。記事の前書きを引用します。

 「深刻な人手不足を補うため、建設会社各社は現場へのロボット導入に力を入れている。1990年代までのロボット開発の反省を踏まえ、重視するのは汎用性や人との協調性だ。革新が進むAI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)など先端技術と連携し、技術者や技能労働者を支える確実な生産性向上を目指す」

 40歳代後半以上の人は、バブル景気のころにも建設現場のロボット開発の話題がメディアをにぎわしたことを覚えていることでしょう。けれども、実際に現場に根付いた技術は少なく、バブル経済崩壊を経てロボット開発は下火になりました。

 しかし近年、深刻な人手不足に悩む建設会社各社などが、AIやIoTといった先端技術の進展もあって、再び力を入れ始めています。

 では現在、開発されているのはどんなロボットなのか? 特別に、大成建設が開発したコンクリート床仕上げロボット「T-iROBO Slab Finisher(ティー・アイロボ・スラブ・フィニッシャー)」をお見せしましょう。

大成建設が開発したコンクリート床仕上げロボット「T-iROBO Slab Finisher(ティー・アイロボ・スラブ・フィニッシャー)」のデモンストレーションの様子(動画:大成建設)

 土間工が無線で操縦し、計8枚のコテが付いたプロペラ2つを回しながら打設後のコンクリート床をならします。

 その性能の詳細は記事(“無駄な作業”を代替させる)を読んでいただくとして、元・ロボット好き少年である筆者が胸を熱くしたのは、記事中のこの下りです。

 「同社(大成建設)が目指すロボットは現状、完全な自動化や無人化ではない。道具のような感覚で使え、省力・省人化を実現できるものだ。『高いレベルを目指して頓挫したバブルのころの反省がある。技能労働者の作業を支援し、匠の技を生かす』(開発者である大成建設技術センターの上野純先進技術開発部長)」

 人を助け、人と共存するロボット──。形は全く違えど、目指すところは「鉄腕アトム」ではありませんか。

 今号の特別リポートでは既に運用段階に入っている“現場サポートロボット”や、それらを生かすための仕組みを多数紹介しています。

 「ロボット開発、再び」。記事からは「今度は本気」という開発者や現場技術者の意気込みが伝わってきます。今回の記事にとどまらず、今後もロボットを注目していきます。

 最後になりますが、今号の特集「生き続ける学校」も、必読のテーマです。ロボット開発と共通するのは「人口減少にどう対応するか」。そちらもぜひお読みください。