「私が省エネに目覚めたわけ」

 はやりに流されるのを嫌う堀部氏ですが、そのときには省エネ性能の話は全く出ませんでした。もちろん、意識はあったと思いますが、自らのテーマとして語るほどのことではなかったのでしょう。

 そんな堀部氏が、9年後の今回の特集では「私が省エネに目覚めたわけ」という話をしています。一部を引用してみましょう。

 「以前の自分に、一種の“先入観”があったことに改めて気付いた。

 正直に打ち明ければ、以前は『寒冷地ならともかく、温暖な地域で缶詰みたいに閉じた空間をつくってどうする』と思わなくもありませんでした。断熱性能を強化した住宅といえば『壁厚や屋根の懐が厚くて、ボテボテしている』などと、あまり良い印象を持っていなかった。

 しかし間違っていました。不十分な断熱気密性能を補うためにエアコンを各部屋に入れて、室外機が戸外にずらりと並ぶ。そうした状況のほうがずっと格好悪い。断熱気密性能が十分なら、設備もコンパクトにできる。部屋ごとの温熱環境のムラが減るので、空間的には小さくても、どの部屋も稼働率が高くなり、実感として『広々した家』になります。こちらのほうが理にかなっている」

「誰もが入手できる部材・方法であることと、特殊になり過ぎないことが大切」と堀部氏(右)。左は今回の記事のインタビュアー、小原隆。省エネ住宅の最新動向などを紹介する日経アーキテクチュアウェブの特設コラム「<a href="/NA/shoene/">省エネNext</a>」で編集長を務める。日経ホームビルダー編集長などを経て、現在は日経BP総研社会インフラ研究所上席研究員(写真:都築 雅人)
「誰もが入手できる部材・方法であることと、特殊になり過ぎないことが大切」と堀部氏(右)。左は今回の記事のインタビュアー、小原隆。省エネ住宅の最新動向などを紹介する日経アーキテクチュアウェブの特設コラム「省エネNext」で編集長を務める。日経ホームビルダー編集長などを経て、現在は日経BP総研社会インフラ研究所上席研究員(写真:都築 雅人)
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 堀部氏と10年近い付き合いになる筆者は、「堀部さん、そんなに正直に話していいんですか」と心配になってしまうほどだ。

 しかし、9年前に「打ったら当然、一塁に走る」と言っていた堀部氏ですから、この話の裏には「省エネ性能から考えること」=「一塁に走ること」という確信があるのでしょう。これからの堀部氏の活動からますます目が離せなくなりました。

 ちなみに、1カ月後の7月27日号「私の駆け出し時代」では堀部氏の“若き日の葛藤”を振り返ります。そちらもお楽しみに。