「労働環境は厳しい」が「意外に満足」?

 先のランキングは企業側に行ったアンケート調査をもとにつくったものですが、一方で働く側からも声を聞いています。日経アーキテクチュア購読者を対象にアンケートを実施し、547人から回答を得ました。その自由記入欄を見ると、この種のアンケートでは異例とも思える書き込み量の多さでした。

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 その一部を誌面に掲載したほか、誌面で載せきれなかった意見はこちらで掲載しています。

 ただ、「労働環境が厳しい」という書き込みがびっしりと並ぶ一方で、今の仕事に満足しているかと尋ねると、547人のうち約半分が、「満足している」または「大いに満足している」という答えを選びました。

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 不満を抱いていた回答者は16.5%だったので、相対的な満足度は高いといえるでしょう。不満はあるけれど、「好きな仕事」だからある程度は我慢できる──そんな数字と見ることができそうです。

 自分たちで出した調査結果に異を唱えるようですが、この結果を見て、「建築界は今のままでいい」と考えるのは大きな間違いだと思います。なぜなら日経アーキテクチュアの購読者の多くは40代以上の中堅・ベテラン実務者です。このグラフの世代別回答者数は、60代以上が178人(32.5%)、50代が142人(30.0%)、40代が143人(26.1%)、30代以下が84人(15.4%)でした。

 就職活動の時期ということもあって最近、建築系の学生と話をする機会がよくあるのですが、おそらくこの質問を就職して間もない20代の実務者に実施したら、全く違う結果になるのではないかと思います。彼らは「好き」であることと「長時間働く」こととは切り離して考えているようです。それを知らずに「今のままでいい」などと考える経営層のいる会社は、いくら名の知れたところであっても、すぐにその噂が伝わり、入社希望者がいなくなることでしょう。

 そして、この質問では男女別を算出していませんが、「半数が満足」というのは当然、男性回答者が多いなかでの結果です。おそらく女性だけに聞いたら、それも違う結果になるような気がします。また、東京と地方都市に分けて集計しても結果が違うかもしれません。

 今回の特集は、単発の企画ではなく「働き方改革シリーズ」の第1弾と位置付けています。年内にも「女性の労働環境」や「地方都市の働きがい」といったテーマを深掘りする予定です。引き続きご期待ください。

 なお、今回の特集の中心になった浅野祐一副編集長が、4月1日付で兄弟誌の「日経ホームビルダー」の編集長に就任しました。このサイトは日経アーキテクチュアと日経ホームビルダーが共同運営していますので、日経ホームビルダー発の記事もチェックしてみてください。