今号の日経アーキテクチュアでは、熊本地震から1年の節目となる特集を組みました。1年前を思い起こすために、このコラムの2016年4月28日号分の書き出しを引用します。

 「4月14日午後9時26分。小さな揺れを東京の編集部(地上9階)で感じたしばらく後、それが熊本地方を震源とする震度7の大きな地震動であったことを速報で知りました。隣り合う日経ホームビルダー編集部や日経コンストラクション編集部も含め、会社にいた記者たちがすぐに集まり、緊急ミーティングを開始。日経アーキテクチュアからは江村英哲記者が翌日、熊本に向かうことになりました。

 『じゃあ、明日から十分に気を付けて』。そう言って江村記者と別れたときには、まさか震度7の揺れが『前震』と呼ばれことになるとは思っていませんでした。

2016年4月28日号「緊急現地報告 熊本大地震」の誌面の一部
2016年4月28日号「緊急現地報告 熊本大地震」の誌面の一部

 江村記者は1日目の現地取材を終え、熊本市内のホテルで床に就こうとした瞬間(16日未明)に、マグニチュード7.3の『本震』を体験しました。(中略)

 日経アーキテクチュアではこれまでにも多くの地震被害を取材してきましたが、記者が取材中に本震を体験したのは、おそらく創刊40年の歴史のなかで初めてのことと思われます」

 ここにも書いているように、熊本地震に関する日経アーキテクチュアの報道がこれまでの震災報道と決定的に違っていたのは、記者が本震の前後をつぶさに取材できた、ということです。それにより、第一報となった2016年4月28日号でも、単なる写真リポートという以上に分析的な記事を書くことができました。

 同号以降も、日経アーキテクチュアでは被害の状況や専門家の調査結果などを随時、報道してきました。特に、多くの犠牲者を生んだ木造住宅の被害については、原因と課題を繰り返し記事にしてきたつもりです。

 そうしたなかで、1年の節目にどんな視点で特集をつくるか。取材チームが出した答えは「見える化」という切り口でした。

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 特集タイトルは、「追跡 熊本大地震 耐震性能を『見える化』せよ~想定外に備える新しい建築の取り組み」となりました。