横浜市内の分譲マンションを“震源”とする事件で、建築界に激震が走りました。三井不動産レジデンシャルが分譲した「パークシティLaLa横浜」に続き、住友不動産が分譲した「パークスクエア三ツ沢公園」も、販売主から全棟建て替えの対策案が示される事態に発展しました。

 ともに一部の杭が支持層に到達しておらず、「傾いた」との指摘を発端に、トラブルが拡大。先にトラブルが発覚した住友不動産は2015年6月の時点では、傾斜している1棟の建て替え、残る4棟の補修を管理組合に提案していました。しかし15年10月に、三井不動産レジデンシャルが「全棟建て替えを基本的枠組みとして考える」と表明したことによって、パークスクエア三ツ沢公園の区分所有者からは全棟建て替えを検討さえしない住友不動産の対応に不満が高まっていたようです。結果的には、新たな施工不良が見つかったことを受けて、住友不動産も全棟建て替えを提案するに至りました。

 「まさか」と思った建築関係者は少なくないでしょう。パークシティLaLa横浜では、瑕疵かどうかが不明なまま全棟建て替えが方向付けられ、それと呼応するかのようにパークスクエア三ツ沢公園も全棟建て替えへと傾いています。

 住宅・都市整備公団(現・都市再生機構)が東京都八王子市内に分譲したマンションで03年に社会問題化した欠陥では、瑕疵をめぐって建て替えか補修かが住民との間で争われました。それとは様相が大きく異なります。

 日経アーキテクチュア2016年3月24日号のNewsクローズアップ「施工不良マンションで全棟建て替えの連鎖」では、分譲マンションで高額賠償リスクが増大してきた状況をリポートしました。デベロッパーや建設会社には警戒感が広がっています。

日経アーキテクチュア2016年3月24日号Newsクローズアップ「施工不良マンションで全棟建て替えの連鎖」から(写真:日経アーキテクチュア)
日経アーキテクチュア2016年3月24日号Newsクローズアップ「施工不良マンションで全棟建て替えの連鎖」から(写真:日経アーキテクチュア)
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 昨年の免震偽装事件に続き、建物の外見からはうかがえない場所にトラブルが潜んでいたことで、建築に対する消費者の不信感が高まっています。施工不良を防ぎ、不安を払拭する取り組みが重要であることは論をまちません。

 今号の住宅特集「今こそ安心品質」では、信頼回復に向けて住宅の品質管理をどう見直していくべきかを考えました。専門家による寄稿記事として「杭トラブルを防ぐ設計者の役割」と題する基礎講座も収録しています。ぜひご一読ください。

日経アーキテクチュア2016年3月24日号住宅特集「今こそ安心品質」から
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 さらに日経アーキテクチュアでは、昨今の杭トラブルの重大化を踏まえ、「設計者が知っておくべき『杭基礎と地盤の基本』」と題する建築実務セミナーを緊急開催することにしました。ご関心のある方はぜひ内容をご確認ください。