「必ず、批判の矢面に立つことになるだろうとは思いました。それでも建築家は、世の中の批判と向き合って対話しなければならない。逃げていては駄目なのです」

 大成建設・梓設計・隈研吾建築都市設計事務所JVの一員として新国立競技場のデザインを担う建築家の隈研吾氏は、日経アーキテクチュアのインタビューに応え、こう語りました。社会的な批判を浴びて建築界は「どん底」にあるとの認識を示し、新国立競技場のプロジェクトを再浮上のきっかけにしたいという強い意志を表明しました。多くの建築家にとっては悪名の高いデザイン・ビルド方式の公共プロジェクトにあえて挑み、一人の建築家として結果を出す覚悟です。

日経アーキテクチュア2016年1月28日号「『新国立』キーパーソンインタビュー 隈研吾の覚悟」から
日経アーキテクチュア2016年1月28日号「『新国立』キーパーソンインタビュー 隈研吾の覚悟」から
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 日経アーキテクチュア2016年1月28日号では、巻頭に5000字超のインタビュー記事「隈研吾の覚悟」を掲載しました。隈氏が新国立に懸ける思いを激白しています。

 思えばバブル経済が崩壊してからというもの、建築界は何かと社会から責めたてられ、リスクヘッジがすっかり体質化してしまったかのようです。リスクヘッジは大切なことだし、否定はしませんが、時にはリスクを踏まえて挑戦しなければ未来は開けません。新国立も、そうした流れを変えるプロジェクトになってほしいと願っています。

 今号には「工期重視の『新国立』 設計・施工で再起動」と題する特別リポートも同時掲載し、新国立の再スタート案の全容を伝えています。併せてご一読ください。

日経アーキテクチュア2016年1月28日号特別リポート「工期重視の『新国立』 設計・施工で再起動」から
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 今号の特集は、これから完成する注目建築を総ざらいする「プロジェクト予報」の2016年版です。今年は「おもてなし建築」をテーマに全部で60のプロジェクトを取り上げました。通して読むと、なかなかに壮観です。

 日本政府観光局は、2015年の訪日外国人が過去最高の1973万人になったと1月19日に発表しました。人口減少局面にあって有力な成長市場の一つが観光です。観光はいまや、地方創生の切り札といっても過言ではないでしょう。観光という視点から建築の在り方を再考し、街との関係やユニバーサルデザインに配慮する重要性が高まっています。

日経アーキテクチュア2016年1月28日号特集「プロジェクト予報2016 おもてなし建築」から
日経アーキテクチュア2016年1月28日号特集「プロジェクト予報2016 おもてなし建築」から
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 日経アーキテクチュアは2015年2月25日号でも、「世界を呼び込む ニッポン改造」と題する特集を組み、インバウンド需要に建築はいかに対応すべきかを考えましたが、観光あるいはインバウンド対応といったテーマはこれからも継続的に情報提供していきたいと考えています。

 日経アーキテクチュアの定期購読者であれば、2016年から拡充したウェブサービスをご活用いただくことで、ご紹介した2015年2月25日号の特集記事も追加料金なしでお読みいただけます。本誌の過去記事もぜひ閲覧してみてください。