2008/05/22
VectorWorksというCADソフトは「初心者にも使いやすい」、「デザインに向いている」といったグラフィックに強い2次元CAD的なイメージが強いかもしれませんが、実はビルディング・インフォメー ション・モデリング(BIM)にも対応できる本格的な3次元CADなのです。そこで、A&AVector Worksプロフェッショナルアドバイザー(APA)である久見瀬展也さんに、「VectorWorks Designer with RenderWorks 2008」を使って、プレゼンから建築確認申請、数量計算、そして環境設計といったBIMソフトとしての活用方法を解説していただきました。第3回目は図面と連動するデータベース「ワークシート」機能を使って、面積表や建具表などを作る方法についてです。 |
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(株)久見瀬外部空間設計事務所 代表取締役 久見瀬 展也 さん http://www.landscape-design.co.jp |
「ワークシート」は図面の裏で動くデータベース
VectorWorksの自動集計機能で建具表を作ろう
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| VectorWorksに搭載されている「ワークシート」は、CAD図面上に描かれた部屋や建具、部材などの図形と連動して、自動的に面積計算や数量集計、図面上の色表示のコントロールなどを行ってくれるデータベース。さらにカスタマイズすることにより、VectorWorksをBIMソフトとしてさらにパワーアップできる |
算数的、集計的、マクロ的とワークシートには3つの使い方が
取っつきやすく、奥が深いデータベース機能は隠れた人気
ワークシートの使い方は、大きく分けて3通りあります。
一番、基本的なのが「算数的」な使い方です。部屋の面積などを自動的に計算して、面積表などを作るもので、VectorWorksのユーザーの多くは、このような使い方をしていると思います。
二つ目は「集計的」な使い方です。図面中に描かれた壁や建具、家具などの種類と数量を自動的にカウントさせるものです。面積などの最大値や最小値などを算出したり、建材の型番などを他の価格データベースと連携させて、金額と合体させた表を作ったりすることもできます。
この使い方は、VectorWorksをあたかもAccessやFileMakerなどの、リレーショナルデータベースのように使うものですので、データベース構築のコツがいります。少しハードルが高い使い方ですが、自動処理の幅を大きく広げてくれます。
三つ目は、「マクロ的」な使い方です。VectorWorksには「ベクタースクリプト」というだれでも無料で使えるオープンソースのプログラム言語が用意されています。これを使うと、VectorWorksのワークシートを自由自在に操れるようになります。
例えば、震災後のハザードマップ。地域ごとの液状化リスクを計算し、その結果からVectorWorks上で作成した地図に、危険度別に色分けして表示する、というような複雑な使い方もされています。
また、他の構造解析プログラムなど入力データを自動的に作るということもできるでしょう。こうした機能を使えるようになると、VectorWorksによるBIM的な処理の幅は、大きく広がってくるでしょう。
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| 面積表は、表示項目や単位、ケタ数などを自由に設定することができる | |
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| CAD図面上の図形から拾った寸法や数量などの情報を関数によって演算処理することも可能だ | |
データパレットで部材ごとに属性情報を付ける
データベースソフトのように図面表示と面積表が連動
それでは、VectorWorksのワークシート機能を活用する第一歩として、算数的な使い方をして「面積表」を作ってみましょう。
独自で創るにはうってつけのワークシートの入門ですが、標準機能のスペースツールを使用すれば、手順はさらに簡単。部屋ごとの床の範囲を定義し、データパレットを開いてみると部屋名や床面積などの属性情報が自動的に作られていることがわかります。この情報をワークシートが拾うことで、面積表が作られます。
いくつかスペース(部屋)を描いた後、VectorWorks Designerに、すでに用意されている「面積表」の画面を表示させると、すでに面積表ができていることがわかります。
もし、面積表に部屋の仕上げグレードや部屋の用途など、追加して情報を表示させたいときには、データパレットで必要な項目を増やしてあげればよいのです。データベースソフトで項目を増やすのと、同じような要領ですね。
そして、面積表の方で部屋名などを修正すると、図面の方にも修正結果が反映されます。これがVectorWorks 2008で可能になった図面とワークシートの双方向のデータ連携なのです。
なお、独自で構築したワークシートの場合、計算結果が手計算と微妙に異なるという精度の高さからくる問題が気になります。このような小数点以下の四捨五入による誤差の補正方法については、五十嵐進氏による市販の書籍などに詳しく解説されています。
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| CAD図面上で部屋の大きさを変えると面積表も自動的に修正される。部屋「P1」と「P2」の変更前(上)と変更後(下)を比較すると床面積求積表の数値も変わっていることがわかる |
住宅のデータから仕上げ表が自動的に作成される
「始めやすく、奥が深い」のが特長のBIM機能
次に、集計的な使い方による建具表などの数量集計表を作る方法です。建築でよく使う建具表や仕上げ表、材料集計表などは、VectorWorks Designerにはすでにフォーマットが用意されています。
VectorWorksで設計した住宅のデータを開き、「ドア一覧表」のシートをツールメニューから起動して表示させてみましょう。すると、建具の名前ごとにソートされ、同じ名前のものの個数が集計された表が出てきます。
ここで注意したいのは、同じ建具に別の名前を付けてしまうと、建具表の中で「泣き別れ」になってしまうことです。これは皆さんもExcelなどを使って処理するとき、似たような経験をされたことがあるでしょう。
これを避けるためには、作図するときに建具名の用語や命名ルールなどを決めておくことが重要です。
ただ、小規模な住宅などでいちいちルールを決めるのも面倒な場合もあるでしょう。その場合は、とりあえず建具表を表示させて、表の中で名称を統一していくという方法をとることもできます。すると、図面とワークシートの双方向連携により、図面中の部材の属性情報や表示も自動的に修正されます。
このように、BIM的な機能もとりあえず使ってみることができ、ルールを決めて本格的な運用を行うことができる、という「始めやすく、奥が深い」というところがVectorWorksのいいところですね。
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| VectorWorks Designerに標準搭載されている建具表。一つのドアにも、メーカー名、品番、ガラス面積など、様々な属性情報がインプットされていることがわかる |
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| VectorWorks Designerに標準搭載されている「仕上げ表」。CAD図面から各部屋の天井や東西南北の壁面、床などの仕上げ情報を拾ってきて、一覧表にまとめて表示する |
樹木のスタンプを図面にポンポン押していくと
樹種ごとの本数が正確にわかる
私はランドスケープや造園の設計を行うとき、樹木の種類ごとの本数を集計するのによく使っています。
標準の植栽シンボルツールを使って、樹木の種類ごとにカスタマイズした部材データを作ったりしながら、これを「スタンプ」を押すような感覚で図面上にポンポンと適当に設置していきます。
すると、その裏では樹種ごとの情報も同時に配置され、ワークシートによる本数の集計も、1本単位で行うことができます。
デザイン的には感覚を重視して樹木を配置する一方、予算計画の観点から、その本数も把握しなければいけません。つまり、樹木の配置という右脳的な作業と、数量の集計という左脳的な作業の両方が求められるのです。
私の場合は、右脳的な作業は自分でやり、左脳的な作業はVectorWorksのワークシート機能に任せています。つまり、本質的なデザインの部分に集中して作業することができるのです。
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| 樹木の集計を行った例。感覚的にいろいろな樹木を配置していくと同時に、樹種ごとの正確な本数が一覧表に瞬時に反映されていく。デザインと予算計画を両立させるための強力なツールだ |
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| 様々な関数やスクリプトを駆使することにより、色を手がかりに検索したり、図面上の部屋の面積によって色を変えて表示したりするようなデータベース的な処理を自由自在に行うことができる |
このほか、ベクタースクリプトを使ってプログラミングすることにより、さらに高度なワークシートの活用ができます。1995年に起こった阪神淡路大震災のとき、復旧作業の進捗状況をデータベース化し、それをVectorWorksの地図上に表示させて、現在の状況がどうなっているのかを一目瞭然でわかるようにしたシステムが活躍しました。
VectorWorksというソフトは、まるで表計算ソフトやデータベースソフトにCADやCGの機能が合体し、しかも自由にプログラミングまでできてしまうという、エンジニアにとっては大変、面白い道具なのです。
これから日本の建築業界にBIMの活用が普及していくにつれ、VectorWorksのもつ潜在能力がますます実務に活用されていくことになるでしょう。
| ●動画で見るVectorWorks活用術(画像をクリックしてください) |
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(次回は6月12日掲載の予定です)
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●問い合わせ先●
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