本心はネクスコ中日本を受け入れたい?

 ネクスコ中日本の参入に、なぜ関心が集まるのかといえば、同社がこのコンセッション事業で圧倒的優位な立場にいるからだ。地図のとおり、コンセッション対象路線のいくつかがネクスコの高速道路につながっており、県が目的の一つとする地域活性化が周辺の道路と連携して実現しやすい。

コンセッションの対象路線と周辺道路(資料:愛知県)

 道路管理者として、ネクスコ中日本の実績が豊富なことは言うまでもない。つまり運営権者として選ばれるには、ネクスコと組むのが手っ取り早い。ネクスコが敵になって参入すると負け戦が濃厚なので、結論を早く得て、無用な検討に時間と労力をかけたくないというのが、その他の民間事業者の本音である。

 知事が考えを示さないので推測してみた。表向きには白紙だが、説明や配布された資料からは、ネクスコ中日本の受け入れを前提に検討が進んでいる気配が感じられる。

 第1は、コンセッションを実施する意義についての説明部分だ。配付資料には「有料道路を運営する企業体を日本で始めて創出、海外の道路インフラ市場で勝ち抜いていくための民間事業者を育成し、その国際競争力強化に寄与」と書かれている。実は以前、記者が県関係者の一人にネクスコ中日本参入の是非を問うたとき、受け入れるべき理由として、この説明がなされた。日本企業が世界市場で戦うために、ネクスコにも日本のコンセッションを経験する機会を与えた方がよいという意見だった。この話は、ネクスコ中日本が経営計画に掲げる「海外の有料道路事業への投資」にも重ね合わさる。

 第2は、観光ルート「昇龍道」の存在だ。中部から北陸にかけてのルートが龍が昇っていく様子に似ていることから名付けられたもので、中部北陸圏の自治体は、外国人観光客呼び込みのキャンペーンを展開している。大村知事は、その起点が中部国際空港だと説明した。この空港に接続しているのはコンセッションの対象道路である。観光客が中部や北陸の観光地に足を運ぶには、ネクスコ中日本の道路ネットワークと一体である方が好都合だ。

 第3は、募集要項の公表から第一次審査受付まで8週間という期間の短さだ。プロモーションでは、事業区域外も含めて、県が沿線開発の提案を求めていることが強調された。短期間で具体的な提案ができるのは誰かを考えると、既に道路ネットワークと運営ノウハウを有するネクスコ中日本か、地域に鉄道の路線網を持つ名古屋鉄道くらいしか、思い浮かばない。

 第4は、民間事業者に関する表現である。知事が説明に使った資料の「主な配慮事項」と題したページには、カッコ付きで「民間事業者」とし、「幅広く応募の門戸を開く」と書かれている。特別扱いの“民間事業者”の登場を予感するのは、記者だけだろうか。