オフィス・商業棟(左)とホール棟(右)の完成予想図。豊島区は区独自の事業として、ホール棟に隣接する現区民センターの建て替えも計画している(資料:東京建物)
1961年に竣工した豊島区の現庁舎。2011年に撮影(写真:日経アーキテクチュア)

 豊島区は3月20日、2015年5月に移転する区庁舎の跡地再開発事業で、東京建物とサンケイビル、鹿島で構成するグループを優先交渉権者に選んだと発表した。豊島区東池袋1丁目にある築50年超の現庁舎の敷地に地上30階地下2階建て、延べ床面積約6万4000m2のオフィス・商業棟を、隣接する豊島公会堂と分庁舎の敷地に地上7階地下1階建て、延べ床面積約1万m2のホール棟をそれぞれ建設する。

 2015年4月に基本協定を締結した後、2016年11月に着工する。オフィス・商業棟は2020年3月、ホール棟は2019年3月の竣工を予定している。オフィス・商業棟は高さ約146m、ホール棟は同約40mとする。ホール棟の高さを周辺の建物とそろえ、余った容積をオフィス・商業棟に移転する計画だ。設計・施工は鹿島が担う。

191億円の定期借地料を一括で区に支払う

 敷地面積は現庁舎が3637m2、公会堂が3049m2となっている。豊島区が70年間(解体や建築などの工事期間を含めると76年6カ月)の定期借地権を設定して、東京建物とサンケイビルが借り受ける。両社は2016年3月、定期借地料として191億円を区に一括で支払う。オフィス・商業棟は両社が運営、維持管理する。ホール棟の一部は、竣工後に豊島区が区分所有権を取得する。ホール棟の敷地は、持分に応じて官民が準共有することになりそうだ。

 東京建物などが提案した再開発コンセプトは「誰もが輝く劇場都市」。オフィス・商業棟は地上1階~2階が飲食・物販店、3階~6階が9スクリーン、計1600席のシネマコンプレックス、7階がスカイロビーとカンファレンスホール、8階以上がオフィスとなる。また、ホール棟の上層部に1300席の大ホール、下層部に階段状になった半屋外劇場や、ボーカロイド(音声合成技術)によるライブが楽しめる世界初の「ボカロ劇場」などを設ける。区はホール棟のうち、大ホール部分を区分所有する計画だ。

 豊島区は現庁舎と公会堂の跡地活用について、公募型プロポーザルを実施した。2014年5月までに8グループから参加表明があったという。東京建物などのグループの提案は、定期借地料の金額面に加え、フジサンケイグループ各社による劇場などのにぎわい創出に向けた支援策が評価された。全体で年間650万人の集客を見込む。