各国の経済動向に左右される不動産業界。仏カンヌで現在開催されている世界最大の不動産会議MIPIM(ミピム)では、国別の参加者数がバロメーターになるのはもちろんのこと、展示ブースやイベントの規模にもそれぞれの景気が顕著に現れる。

 今年、最も勢いを感じさせるのはイギリス。イギリス国内の各都市が、会場の随所に大型ブースを設けている。とりわけ多くの訪問者を引き付けているのが、ロンドンのパビリオンにある超大型の都市模型だ。

ロンドンの都市模型。都心部だけでなく、郊外にあるオリンピックパーク周辺の再開発なども含まれている

 長さ12.5mもあるロンドンの広域模型は、デベロッパー35社の協力を得て完成した。総事業費1000億ポンド(約18兆円)に達する新旧の開発プロジェクトが盛り込まれている。人口の急増を背景に、住宅プロジェクトが投資家らの関心を集めているという。

 パリのパビリオンは、カンヌの浜辺にある。屋外のテラスにしゃれた商談カフェを設置。常にセミナーやカクテルパーティーが行われ、満場のにぎわいを見せている。MIPIMの開催国である地元フランスとイギリスの各都市は展示規模を競い合い、両国の激しい都市間競争をうかがい知ることができる。

大パリ圏の各地で計画されている大小さまざまな開発プロジェクトを紹介。小グループでの商談が盛んだ

イスタンブールも攻勢

 原油価格下落の影響か、例年に比べて展示規模を縮小したロシア勢に代わり、今年一段と存在感を高めているのがトルコだ。メーン会場の大型展示に加えて、会場正面にもイスタンブール・パビリオンを据えた。

 1000分の1スケールで表現したイスタンブール市内の模型では、昼夜変化する街の様子が音響効果もたっぷりに体験できる。イスタンブール商工会議所は、100年以上の歴史を持つカールトンホテルでカクテルパーティーを開催。会場ではあでやかな演出とともにトルコ料理が並んだ。

ボスポラス海峡を挟み、ヨーロッパとアジアにまたがるイスタンブールの市街地が一望できる

 国別の参加者数では3位につけるドイツ。景気の浮沈に関わらず、各都市が毎年独自に展示や会議などを催している。ブース裏に設けられた飲食コーナーでは、例年通り地ビールや名物のソーセージが提供されていた。今年は特ににぎわいを見せているようだ。

フランクフルトのブースに隣接するテラスはドイツクラブのよう。昼夜にぎわいをみせている

 大手デベロッパーのEMAAR(エマール)とともに、昨年からMIPIMにカムバックしたドバイ。今年は五つの大型プロジェクトを披露している。その一つが、黄金に輝くツインタワーの模型だ。現在、世界一の高層建築物であるブルジュ・ハリファの近くに建設が予定されている。完成すれば世界一の記録を塗り替えるという。

EMAARによるドバイ クリーク ハーバー開発の目玉は、高さ世界一のツインタワー。住居が主体となる。最終的な高さは未定だ

 日本はメーン会場での展示に加え、オフィシャルコンファレンスを連日開催。さらに、ブースでのセミナーやパーティーなどのイベントも積極的に展開している。会場の入り口近くに今年初めて設けられたビジターセンターでも、夕刻に寿司パーティーを催し、今年5月に日本で開かれるMIPIM Japanへの参加を呼びかけた。

日本のオープニングパーティーでは鏡割りも行われた

篠田 香子=フリーランス