社家町の復活なるか

 「寄付頼みの収入では今後、文化財として神社を次世代に残すのが難しくなる」。このように考えた下鴨神社は数年前から、所有する敷地の活用を模索。エスアイ・アセットサービスの小野社長らに相談を持ちかけていた。

 「条例などに従って景観を維持し、今回の計画によって世界遺産の価値がむしろ高まるように事業を進めてほしい」と京都市の担当者は話す。神社はマンションの開発に合わせて、参道のアスファルト舗装を石畳風の舗装や砂利敷きに変更。道幅も現在の2倍以上となる14.5mに広げる計画だ。

参道の整備イメージ。マンションの開発に合わせて、既存の研修道場は取り壊す(資料:下鴨神社)

下鴨神社は計画地の周辺でも、参道沿いにあった社家町の景観保全に取り組む(資料:下鴨神社)

 「マンションには神社の歴史に関心のある人々に住んでもらい、伝統祭事の支援者となってほしい」と下鴨神社は期待を寄せる。神社の周囲にはかつて、神職や宮大工などが暮らす社家町(しゃけまち)があった。今回のマンション開発は、現代版の社家町の復活ともいえそうだ。


[開発の概要]
開発名:糺の森第三期整備計画
所在地:京都市左京区下鴨泉川町60(住居表示)
最寄り駅:京阪・叡山電鉄出町柳駅徒歩5分
面積:土地9647m2、延べ床未定
構造:RC造
階数(地上/地下):3/0
用途:住宅
戸数:107
事業主:賀茂プロパティーズワン合同会社(エスアイ・アセットサービスのSPC)
設計者:竹中工務店
施工者:竹中工務店
工期:2015年11月~2017年2月

瀬川 滋