21年ごとの遷宮に30億円

図中に「第三期」と示す部分がマンションの計画地(資料:下鴨神社)

 下鴨神社は古都京都の文化財の一つとして1994年に世界遺産に登録されたが、計画地は通りを1本挟んで世界遺産の区域外となっている。

 計画地には現在、幅6mの参道が南北に通り、参道の東側には講堂などを備えた研修道場が立つ。1968年に竣工した地上3階建て、延べ床面積1955m2の建物だ。一方、参道の西側は有料駐車場として使われている。1990年ごろまでは、神社が収益を得るためにゴルフ練習場があった。

 下鴨神社はマンションの計画地を神社の境内ではなく、境内に隣接したエリアと位置付ける。世界遺産周辺のバッファーゾーンとして、糺の森と一体的に整備する方針だ。

 同神社はマンションの開発によって借地料収入を得なければならない理由として、以下の二つを挙げている。

 一つは21年ごとに約70棟に及ぶ社殿を修復したり、屋根の檜皮(ひわだ)をふき替えたりする「式年遷宮」の費用を捻出するためだ。2015年4月には34回目の遷宮が行われる。

 遷宮には1回で約30億円の費用がかかるものの、国から受け取る補助金は8億円ほど。残りの約22億円は、企業などからの寄付で賄わなければならない。ところが、リーマン・ショックの影響などで、現在は必要額の半分ほどしか集まっていないという。

 もう一つは、マンションの計画地は古くから糺の森の一角を占めているにもかかわらず、文化財指定地や世界遺産の区域から外れ、環境の維持や保全に公的な補助が受けられないからだ。計画地内にある研修道場は老朽化しているうえ、耐震性にも問題がある。しかし、神社独自の予算では解体さえままならないという。樹木の管理も行き届かず、糺の森の植生とは異なる樹木が生い茂り、荒れた状態となっている。