建築環境総合性能評価システム、CASBEE(キャスビー)の認証を取得した賃貸オフィスビルの賃料が、その他のビルに比べて高い傾向を示すことがわかった。一般社団法人日本サステナブル建築協会が2月13日に東京都内で開催予定の「スマートウェルネスオフィスシンポジウム」で報告する。

 東京23区の築10年未満、延べ床面積1万坪以上のビルで、1坪あたりの月額共益費込みの推定成約賃料を比べたところ、CASBEEビルが平均2万9412円となり、非CASBEEビルよりも約2300円高かった。横浜市、大阪市、名古屋市でも、CASBEEビルが非CASBEEビルを上回った。

 調査はCBREが受託し、CASBEEの評価を自治体に届け出たビルやCASBEE-新築、CASBEE-不動産の認証を取得したビルなど196棟を対象に実施。エリア、規模、築年数などの条件で同等の非CASBEEビルと比較し、推定成約賃料や稼働率との関係を分析した。

 CASBEEの評価項目と賃料の関係を調べたところ、室内環境、サービス性能、室外環境、エネルギー、資源・マテリアル、敷地外環境といった評価項目のなかでは、サービス性能が賃料に強い影響を与えていることがわかった。サービス性能は、オフィスの広さ、耐震性、空調や換気性能など約30の評価項目で構成されており、テナントがビルを選ぶときの判断要素に近い。

 CASBEE-新築の認証ビルでは、CASBEEのランクによる賃料の違いが1ランクで263円と表れた。最高ランク「S」のビルは、2ランク下の「B+」のビルに比べて、賃料が500円以上高い可能性を示している。

 一方、CASBEE評価と稼働率の相関分析では、統計的に有意な結果は表れなかった。貸し主のリーシング方針やマーケットの環境が稼働率に影響していることが理由とみられる。

 ビル事業者の一部は、建物環境認証の取得に積極的になれない理由として、収益向上効果が認められないことを挙げている。環境性能と賃料の相関が明らかになると、環境配慮の取り組みが進展する可能性がある。日本サステナブル建築協会は3月末に最終の報告書をまとめる予定だ。