新刊『不動産力を磨く』(ニッセイ基礎研究所 不動産投資チーム著、日経BP社)は、「不動産力を磨くことで私たちはより賢く手ごわい客となって、自分たちの豊かな暮らしを実現できる」と説く。収録した座談会の一部を紹介する。

松村 ところで、インターネットだけで情報を得て不動産投資をしている人はいるのでしょうか。以前、都内の社宅から出ることになった知人が、インターネットで鎌倉に中古の戸建て住宅を見つけて転居しました。こんなことはネットがないとできないことです。昔なら、いろんな地域を歩き回って地元の不動産屋をのぞくしかない。不動産投資でも同じようにインターネットで物件探しができるのでしょうか。

加藤 投資物件でもネットの出会いはあると思いますが、時間が経つと情報がどんどん古くなります。

松村 本を読んだり、インターネットを見たりする以外に、こんなことをしたら不動産に関する感性が磨かれるといったことがあれば教えてください。

加藤 やはり、実際にモノを見るということが大事です。

松村 その時、金融の目線でなく、やはり不動産の目線で見るんでしょうね。この街はよくなりそうだとか、このマンションはこんなだから空き室ばかりなんだとか、その気になって街を歩くといろいろなことが見えてくるはずです。

松村 先ほど場所が大事だという話が出ましたが、利用する側の価値観の変化にも気をつけないといけません。私と同年代の不動産会社の知人が世田谷区に小さな戸建て住宅を買いました。彼の諸先輩方は多摩や横浜など都心から遠く離れた場所に庭付きの大きな戸建て住宅を買ったけれど、彼はブランド住宅地の世田谷区に小さいながらも戸建て住宅を買うことができたわけです。

 ところが、それを聞いた若い人から「どうしてそんな不便なところに家を買ったのですか。私は江東区のタワーマンションがとても便利で気に入っています」と言われてショックを受けていました。

 私の世代だと、江東区より世田谷区、マンションより戸建て住宅の方が良い、という価値観です。しかし、今の若い人は生活利便性を重視しますから、ブランドエリアでなくても、銀座まで自転車で行けて便利なうえに、タワーマンションは貸しやすく売りやすいと評価する人が多いということなんです。賃貸住宅経営をするなら、こういった利用者の価値観の変化にも敏感にならないといけないでしょう。