ある方の紹介で、森ビルの常務執行役員を務める小笠原正彦さんとお会いしたのは、この夏のこと。初対面ということもあったのだろう。少し遠慮されていたのか、言葉少なく、控えめな発言が多い印象だった。
後日お会いしたときには、はにかみながら笑顔で現れ、距離が少し近づいた気がしたが、ぎこちない気配が見え隠れしている。伺ってみると、北海道の小さな村で生まれ育ったとのこと。北国育ちで少し引っ込み思案なのかもしれない。同じ雪国出身の自分を垣間見る思いがした。
その小笠原さんが手がけてきた仕事はダイナミックだ。六本木ヒルズの開発時には、グランドハイアット 東京のプロジェクトマネジャーとして、主に建築面の統括役を務めた。その後、上海でパークハイアットの開発に携わったあと、森ビルの“街”を運営する「タウンマネジメント」を率いてきた。現在はグランドハイアットの統括役と六本木ヒルズ、アークヒルズ、2014年夏にオープンする虎ノ門ヒルズのタウンマネジメントのリーダー役を務めている。
忙殺される日々を送っているに違いないのだが、時間に急かれている感じがあまりない。淡々としたペースを守っているように見える。何度かお会いし、目上の人や部下とのやりとりを見ていて、厳しい面を垣間見る瞬間もあったが、基本的に飄々とした佇まいは崩れない。
インタビューは、六本木ヒルズのけやき坂に面した「アンダーズスタジオ」で行った。ここは2014年6月、虎ノ門ヒルズの中にオープンするハイアットグループ傘下のホテル「アンダーズ 東京」のプロモーションスペース。「アンダーズ」が備えているオープンな雰囲気のダイニング&キッチン「アンダーズスタジオ」を、ホテルのオープンに先駆けて作ったという。
広々とした部屋のような造りは、木肌やグリーンを基調に、ナチュラルな雰囲気でまとめられている。気取ったゴージャスさやきらびやかな非日常性はなく、上質な空間に仕上げてある。少し緊張した風情で現れた小笠原さんは、ギャラリーが多かったことも作用したのか、インタビューが始まっても、どこか居心地が悪そうな様子。ほどなくそれも解れていき、森ビルが街と結びついていくこと――大きな思いを語るほど、言葉は熱を帯びていった。
伊藤忠ファッションシステム ifs未来研究所所長
「虎ノ門ヒルズ」の地下に環状2号線を通した理由
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