森ビルの小笠原正彦取締役常務執行役員は1958年北海道生まれ。1981年東海大学土木工学部卒業後、大木建設に入社して首都高速道路の設計・工事監理を担当。1988年ホテルアルファ・トマムに入社、トマムリゾートの設計企画を担当。1993年JR東海に入社、名古屋マリオットアソシアJRセントラルタワープロジェクトなどを担当。2001年森ビルに入社し、グランド ハイアット 東京 プロジェクトマネジャー。2007年、中国 パーク ハイアット 上海 社長。2010年森ビル 取締役ホスピタリティ事業部長、2011年から現職。(撮影/竹井俊晴)

 ある方の紹介で、森ビルの常務執行役員を務める小笠原正彦さんとお会いしたのは、この夏のこと。初対面ということもあったのだろう。少し遠慮されていたのか、言葉少なく、控えめな発言が多い印象だった。

 後日お会いしたときには、はにかみながら笑顔で現れ、距離が少し近づいた気がしたが、ぎこちない気配が見え隠れしている。伺ってみると、北海道の小さな村で生まれ育ったとのこと。北国育ちで少し引っ込み思案なのかもしれない。同じ雪国出身の自分を垣間見る思いがした。

 その小笠原さんが手がけてきた仕事はダイナミックだ。六本木ヒルズの開発時には、グランドハイアット 東京のプロジェクトマネジャーとして、主に建築面の統括役を務めた。その後、上海でパークハイアットの開発に携わったあと、森ビルの“街”を運営する「タウンマネジメント」を率いてきた。現在はグランドハイアットの統括役と六本木ヒルズ、アークヒルズ、2014年夏にオープンする虎ノ門ヒルズのタウンマネジメントのリーダー役を務めている。

 忙殺される日々を送っているに違いないのだが、時間に急かれている感じがあまりない。淡々としたペースを守っているように見える。何度かお会いし、目上の人や部下とのやりとりを見ていて、厳しい面を垣間見る瞬間もあったが、基本的に飄々とした佇まいは崩れない。

 インタビューは、六本木ヒルズのけやき坂に面した「アンダーズスタジオ」で行った。ここは2014年6月、虎ノ門ヒルズの中にオープンするハイアットグループ傘下のホテル「アンダーズ 東京」のプロモーションスペース。「アンダーズ」が備えているオープンな雰囲気のダイニング&キッチン「アンダーズスタジオ」を、ホテルのオープンに先駆けて作ったという。

 広々とした部屋のような造りは、木肌やグリーンを基調に、ナチュラルな雰囲気でまとめられている。気取ったゴージャスさやきらびやかな非日常性はなく、上質な空間に仕上げてある。少し緊張した風情で現れた小笠原さんは、ギャラリーが多かったことも作用したのか、インタビューが始まっても、どこか居心地が悪そうな様子。ほどなくそれも解れていき、森ビルが街と結びついていくこと――大きな思いを語るほど、言葉は熱を帯びていった。

川島 蓉子(かわしま ようこ)
伊藤忠ファッションシステム ifs未来研究所所長
川島 蓉子(かわしま ようこ)1961年新潟市生まれ。早大商学部卒業、文化服装学院マーチャンダイジング科終了。1984年、伊藤忠ファッションシステム入社。ファッションという視点で消費者や市場の動向を分析している。「おしゃれ消費ターゲット」(幻冬舎)、「TOKYO消費トレンド」(PHP)、「ビームス戦略」(PHP)、「伊勢丹な人々」(日本経済新聞社)、「社長とランチ」(ポプラ社)、「ブランドはNIPPON」(文藝春秋)など著書多数。

「虎ノ門ヒルズ」の地下に環状2号線を通した理由
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