日本企業が海外で組成したREIT(不動産投資信託)としては初めてとなる、Spring REIT(スプリングリート/春泉産業信託)が12月5日、香港証券取引所に上場した。日本政策投資銀行と独立系の投資顧問会社、あすかアセットマネジメントが出資するADキャピタル(旧あすかDBJパートナーズ、本社:千代田区)がスポンサーだ。上場時の資産は北京中心部の複合施設「華貿中心(China Central Place)」のみだが、将来は日本や台湾への投資も検討する。

 華貿中心は中国中央電視台(CCTV)などがある朝陽区のビジネス地区に位置する。百貨店の新光三越やリッツカールトン、JWマリオットなどを含む複合施設で、メインビルはショッピングモールの上にオフィスタワー3棟が立ち並ぶ構成。Spring REITは、このうち28階建てと32階建てのタワー2棟、延べ床面積で合計約14万m2を、スポンサーのファンドから取得した。鑑定評価額は77億4700万元(約1300億円)だ。

 ADキャピタルは2006年の施設竣工前に、年金基金を中心とする日本の機関投資家から出資を得て、地元の電力系デベロッパーからプロジェクトの権利を取得。以来、私募ファンドの資産として同ビルを運用してきた。今回は、このファンドをREITに転換したうえで、既存投資家の投資口持分を除く約4割を売り出した。大型不動産株の上場と重なった需給要因もあり、初値は3.64香港ドルと公募価格を4.4%下回った。分配金利回りは9%を超えている。

 Spring REITの資産運用会社で会長を務める豊島俊弘氏(ADキャピタル代表取締役)は、「華貿中心は東京でいえば丸の内に相当する中心街にあり、こうしたハイグレードのAクラスビルをREITに組み込んだ事例は中国でも初めて。日本に海外不動産への投資機会を提供する先行事例としたい」と話している。今後は国内のREIT投資家向けに、日本語でも情報発信していく意向だ。