不動産協会が2013年3月にまとめた「不動産業環境実行計画」のオフィスビル分野の行動目標から、二つの見どころを紹介する。

 一つは、新築オフィスビルの数値目標の改定だ。設備の省エネ効率の指標として知られるERR(イーアールアール:Energy Reduction Rate)を、従来の「10%以上」から、新目標では「15%以上」に改めた。延べ床面積1万m2以上を目安とする大規模建築物はより厳しく、「20%以上」を「25%以上」とした。

 ERRは、設備の省エネ効率を基準値からの低減率で示す指標だ。空調、換気、照明、給湯、エレベーターの五つの設備について、仮想のエネルギー消費量と、採用した設備機器のエネルギー消費量を比較し、建物全体の低減率を導き出す。ERRが大きいほど「設備の省エネ性能が高い」と評価できる。目標を上げることによって、新築時・改修時に省エネ設備や自然エネルギーの導入が進むことになる。

 日経不動産マーケット情報が東京都の公表資料に基づき、延べ床面積1万m2以上の大規模オフィスビル約260棟のERRを集計したところ、「20%以上」のビルは全体の74%、「25%以上」は66%だった。実際のビルのERRを見ると、例えば環境配慮型ビルとして計画され、ここ1~2年内に完成したソニーシティ大崎や飯野ビルディング、渋谷ヒカリエのERRは50%を上回る。これに対して新丸の内ビルディング(2007年竣工)、東京汐留ビルディング(2005年竣工)などは20%以下だ。

 ちなみにERRとセットで語られる、建物の断熱・遮熱性能を示すPAL低減率(パル:Perimeter Annual Load)の目標値は、従来のまま「10%以上」に据え置いた。とはいえ、ERRやPAL低減率は建物の潜在的な性能を示す値だ。本当に大事なのは結果だから、今後は運用段階のエネルギー消費量と合わせて、ビルが評価されていくことになるだろう。

 もう一つの見どころは、環境不動産の正当な評価に関することだ。実行計画は「不動産の環境価値評価を積極的に活用、普及し、環境不動産が正当に評価されるようにする」と記した。金融機関の環境認証制度やCASBEE(キャスビー:建築環境総合性能評価システム)などを利用し、結果を公開することを勧めている。つまり、高い性能を賃料に反映できるように、行動を起こそうということだ。協会が基本方針とする「環境と経済の両立」につなげるねらいがある。