今年のMIPIMでは、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)が来場者の情報ツールとしてすっかり定着した印象を受けた。

 主催者の仏Reed MIDEMは、数年前からMIPIM Worldと呼ぶ独自のSNSとブログを運営している。2011年からは、Twitter(@MIPIMWorld)でリアルタイムの情報発信も開始した。さらに、FacebookにiPhoneアプリ、Youtube、Flickrとはやりのソーシャルツールを総動員して、展示ブースの情報や翌日の注目イベントなどを発信している。

 公式・非公式を含めて100を超えるセッションと数え切れない展示ブースの中から役立つ情報を見つけるために、筆者にとってもこれらは欠かせないツールとなった。久しぶりに会う海外の友人と、Facebookで会合の約束をする来場者も多かっただろう。国を問わず安価に通信できるスマートフォンの普及と相まって、つい数年前までは考えられなかったほど、リアルタイムに情報を得ることが簡単になった*。

*国際ローミング可能な携帯電話は普及しておらず、通信費は非現実的なほど高額だった。海外データ定額制が導入されたのはわずか3年前。それまで取材のアポイントのために欧州仕様の音声専用端末を買い、現地のタバコ屋でSIMカードにポイントをチャージしながら通話したものだ。メールを見たければ、重いパソコンを持ちWi-Fiの電波を求めて右往左往した。


"Follow us"と公式アカウントの活用を呼びかける(写真:MIPIM)

 もちろん、MIPIMで見られる現象は、不動産業界の“ソーシャル化”トレンドを反映しているに過ぎない。英語圏ではデベロッパーや設計会社の公式サイトにも、TwitterやFacebookのアイコンがあふれる。一方で、情報の洪水の中から本当に必要な情報を取捨選択することは、年々難しくなっていくようだ。

 MIPIM開幕日の3月12日に発表されたmyCREOpoint.comは、不動産のプロに向け、ウェブ上のテキストデータを解析するサービス。忙しいエグゼクティブをターゲットに、月14ドル95セントから有料で提供している。

 企業名や人物名、投資したい都市や物件名などのキーワードを登録しておくと、Twitterや主要ニュースメディア、大手不動産会社のウェブサイトなどから関連情報を集め、パソコンやスマートフォンで見やすい形に一覧表示する。Twitterには膨大で雑多な情報があふれているが、独自のフィルタリング技術によって、仕事上意味のない発言(ランチの予定、天気の話題など)や、重複するツイートを省いているのがポイントだ。

 同サイトの運営者、米CREOpoint社を創業したJ.C. Goldenstein氏は、大手会計コンサルティング会社のErnst & Youngで不動産部門を率いたあと、ITサービスに転じた。人脈と口コミで成り立ってきた不動産業界にはなじみのない世界だが、今後はこうしたリアルタイム情報の入手が当たり前になっていくのかもしれない。また、自社のネット上の悪評を把握するリスク管理ツールとしても有効だろう。

 MIPIM会期中、数万に及ぶ来場者のツイートを解析した結果はこのサイトで見ることができる。

不動産に特化した情報アグリゲーションサービス、myCREOpoint.comの画面

本間 純