社会配慮型オフィスビル評価で「極めて優れている」と評価されたJPタワー

 三菱UFJ信託銀行は、テナントの視点でオフィスビルを評価する指標を作成し、2012年12月、顧客向けに公表した。内装の原状回復の柔軟性やフロア形状のチェック項目も設けた。2~3年かけて評価実績を重ね、融資業務に反映できるかどうかを判断する。評価は年間約10件を想定し、ビルオーナーの合意を得て無料で行う。オーナーの希望があれば結果を公表する。

 「社会配慮型オフィスビル評価指標」と呼ぶツールは、社会や環境に配慮したオフィスビルは多くのビルユーザーに支持され、市場価値も高いという仮説に基づいて作成した。ビルに認証を付与する制度として運用することは当面、考えていない。テナントがビルを選定する際のものさしとして利用することを期待している。この種の評価が社会に浸透すれば、中長期的には金融機関の融資の安全性も高まるとみている。

 東京都心5区(千代田、中央、港、新宿、渋谷)に所在する延べ床面積1万m2以上のオフィスビルを評価対象とする。識者の意見やアンケート結果を踏まえて、経営、ワーカー、社会に関する28の評価項目を設定した。災害に対する安全性や事業継続性、省資源・省エネ性、快適性などを主要な評価軸に据えている。

 項目ごとに、過不足がなく調和が取れている水準を80点とし、80点以上で「優れている」、85点以上で「大変優れている」、90点以上で「極めて優れている」と位置づけた。加点項目もあるため、最高点は項目ごとに異なる。配点率に従って各項目の得点を算出し、合計点をビルの総合点とする。2012年に竣工した千代田区丸の内のJPタワーを採点したところ93.4点で、極めて優れたビルとなった。

 内装に関する設問は、省資源に向けたオーナーの取り組みとして盛り込んだ。「テナント交替時にリサイクルを促進する取り組みがある」「前テナントの残したものを次のテナントが継続して使用できる」「クオータースケルトンである(天井や床材なしでの内装の提供)」などを問う。トイレや洗面器の数を待ち時間の視点で評価する項目や、ワンフロアの面積、形状などの設問もある。

 オフィスの内装変更や原状回復に伴う廃棄物発生の問題は、廃棄物削減を環境方針に掲げるビルオーナーでも解決できていないケースが多い。本誌がオフィスビルのテナントを対象に実施した2012年の調査では、回答者の7割が標準内装以外を希望するなど、テナントがオフィスビルの現状に満足していない様子が浮かび上がった。

 金融機関によるビル評価は、日本政策投資銀行や三井住友銀行が先行して取り組み、認証制度として運用している。金融機関以外では、設計者・施工者の視点で開発した従来のCASBEE(キャスビー:建築環境総合性能評価システム)に加えて、2012年には、不動産関係者が使うことを考慮したCASBEE不動産マーケット普及版が登場した。米国生まれのLEED(リード)も日本での認証実績を増やしている。