国土交通省は、環境に配慮した不動産の指標を作成するための検討を開始する。7月に政府が公表した日本再生戦略の原案には、環境に配慮した不動産の総延べ床面積を2020年までに1000万m2とする目標が盛り込まれた。この目標の実現に向けて、判断の目安となる指標を定め、環境配慮型不動産の供給に役立てる。環境配慮型不動産へのテナント誘致を促す効果などが見込めることから、独自の認証制度の創設も検討する。検証や試験運用などを2014年度までに終え、2015年度から制度をスタートさせたい考えだ。

 1000万m2の目標は、オフィスビルの供給量を基に設定した。国交省の統計で、6階建て以上の事務所ビルの延べ床面積がおよそ1億2000万m2あることから、その1割弱を実現可能性のある目標とした。供給量の多いオフィスビルを対象に、指標づくりに着手する。既存ビルの省エネ改修促進を柱としている。

 日本では、建物の環境性能を評価する手法としてCASBEE(キャスビー:建築環境総合性能評価システム)が知られている。しかし、何をもって環境配慮型不動産と位置づけるか、統一の見解はない。どのような指標にするかは今後の検討課題だが、エネルギー消費量の実績値を用いる案が挙がっている。運用段階における、延べ床面積1m2あたりの年間エネルギー消費量で、ビルの相対的な位置を把握する手法だ。

 建築環境・省エネルギー機構(IBEC)が5月に公表した「CASBEE不動産マーケット普及版」を用いる可能性もある。CASBEE普及版もエネルギー消費量を重要な評価軸として位置づけている。ただ、実績値はビルの稼働状況や使われ方の影響を受けることから、CASBEE普及版では計画値の配点を高くしている。

 国交省の環境不動産懇談会が4月にまとめた提言は、エネルギー消費量原単位を例に掲げ、ベンチマークの作成を求めた。市場における優位性の判断や業務改善の手がかりとして、共通のわかりやすい表示が必要だと指摘している。

 建物の省エネ促進に関しては、経済産業省が2011年度からの運用開始をめざして、省エネルギー性能を評価・認証するベンチマーク・ラベリング制度の導入を検討していた。建物運用段階の性能評価に重点を置き、やはり建物のエネルギー消費量を評価基準にする方針だったが、意見がまとまらず頓挫した経緯がある。国交省の指標作成は、経産省とは別の取り組みとして進める。