今年のMIPIMにおける日本からの出展は過去最大規模となり、参加者も最終的に80人を超えた。展示会場となったパレ・デ・フェスティバルの別館に東京都が大手デベロッパー6社と共同で90m2の「東京パビリオン」を出展。隣接して三菱商事系のダイヤモンド・リアルティ・マネジメントが、ザイマックス、地方都市の再生事業を手がけるまちづくりカンパニー・シープネットワークの2社とともに58m2のブースを設置した。また、ケネディクスも本館の展示フロア内に独立したブースを構えた。

 東京都の出展目的は「アジアヘッドクォーター特区」への外国企業の誘致だ。同特区では優遇税制、規制緩和などを実施するほか、生活面でも医療・教育などで外国人向けのサービスを向上させ、2016年までにアジア地域の業務総括拠点・研究開発拠点を50社以上、その他の外国企業を500社以上誘致することを目標にしている。

 東京パビリオンでは、三井不動産が日本橋、三菱地所が丸の内、東急不動産が渋谷、住友不動産が新宿、森ビルが六本木における各社の具体的なプロジェクトのプレゼンテーションを行った。また、森トラストが不動産資産の危機管理態勢と技術を、日本貿易振興機構(JETRO)が日本進出を希望する外資系企業へのサポート体制などを説明した。

 東京都はオリンピック誘致PRのために出展した2009年に続く、4度目の出展。期間中は延べ約1500人がブースを訪れた。外資系の不動産仲介会社などから、東京でのビジネスチャンスを求めての売り込みも多かったという。この官民合同の展示ミッションに参加した26人をとりまとめた、知事本局政策担当部長の渡辺滋氏は「ブースで行った日本市場進出に関するアンケートへの回答数も350件と前回を大きく上回った。このデータベースを活用し、エンドユーザーにつながるネットワークを構築したい。企業誘致とともに、MIPIMは投資誘致の面でも魅力的な東京を売り込むチャンスだ」と語る。

 今年初めてMIPIMに参加したダイヤモンド・リアルティ・マネジメントの荻久保直志社長は「規模・質ともに世界トップクラスのイベントだ。投資家や同業者との効率的なネットワーキングができ、日本への不動産投資が見直されていると感じた。将来は運用会社の出展が増え、相乗効果のあるジャパンブースができるとよい」と語った。

 昨年のMIPIM閉会日に大きな震災に見舞われた日本に、復興を応援する参加者らの声も多く聞かれた。東京ブースのパーティで振る舞われたすしは黒山の人だかりを集め、世界最大のミシュラン星数を誇るグルメ都市としての実力を見せつけた。

 だが、日本からの参加者に共通する感想は、海外の人々の東京に関する知識が古いままだったり、そもそも訪問したことがなかったりと、その現状が意外に知られていないということだ。今後は不動産というハード面だけでなく、観光やライフスタイル面のアピールを含めたシティセールスの工夫も課題といえるだろう。

篠田 香子=フリーライター