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【MIPIM】ユーロ危機の風は凪ぐ

2012/03/19

 南仏カンヌ周辺の晴れ日は1年間のうち300日を占め、東京よりも4割多いという。今年のMIPIMは開幕前日に雨に見舞われたものの、その後4日間の会期中は、例年と同じく暖かな日差しに包まれた。最終日の主催者発表による確定数値によると、MIPIMへの来場者は1万9300人を数え、昨年を5%ほど上回った。

 ユーロ危機の震源地とそう遠くないこの地だが、街は以前と相変わらず、黄色いストラップの参加証を首に下げた人々であふれている。会場で無料配布される英字紙が刻々とギリシャ債務の削減に向けた民間債権者との交渉経過を伝え続け、主要国株価は混乱回避を見越した水準へとじりじり上昇。会期最終日の9日朝には、民間債権者が1000億ユーロ(11兆円)強を放棄する形で決着したことが伝えられた。ギリシャに次ぐ懸念先だったイタリアが、経済学者出身のモンティ新首相の下で改革を進め、急速に投資家の信頼を取り戻しつつあるのも好材料だ。

 穏やかな地中海性気候も手伝って、嵐の真ん中に乗り込むつもりだった筆者の意気込みはどこへやら。初日の会場に漂っていた緊張感も、日に日に和らいでいくのを感じた。MIPIM伝統のパーティー文化は今年も健在だ。毎日午後3時を過ぎれば、あちこちの展示ブースから、あるいは会場外に停泊するヨットの上から乾杯の声が聞こえ始める。

会場のパレ・デ・フェスティバルを海から望む(写真:本間 純)

朝食会議から夜のパーティーまでスケジュールはぎっしり(写真:MIPIM)

 米クッシュマン・アンド・ウェイクフィールドは、会期2日目の3月7日にカンヌで記者会見を開き、「International Investment Atlas 2012」と呼ぶレポート(リリース本文)を発表した。同社はこのなかで、世界の商業用不動産の取引は欧州債務危機の影響が残る2012年前半に減少が見込まれるものの、年後半には前半期と比較して最大20%の増加が期待できるとの予測を示した。年間を通じた取引高は、2011年と同水準の7100億ドル強(約60兆円)、複合住宅を加えた数字では8050億ドル強(約67兆円)になるとみている。

 楽観的なムードは、米ウイスコンシン大学のFrancois Ortalo-Magne教授のグループが会場で実施したアンケート結果でも示された。今回のMIPIMに参加した経験を通じて、今後のビジネス環境への見通しが「好転した」と答えた参加者は54%を占め、「変わらない(43%)」、「悪化した(3%)」との答を上回った。さらに、64%は今年、人材採用を予定していると回答した。


元ドイツ外相が登壇、欧州統合の促進を協調

fischer
元ドイツ外相のJoschka Fisher氏が登壇(写真:MIPIM)

 ただし人はなかなか先を見通せないもの。ギリシャの隠れ債務は1年前のMIPIMの時点ですでに露呈していたが、対岸のリビア内戦に関心が集まっており、ここまで事態の悪化を予想する声は聞かなかった。債務削減合意で足元の不安は和らいだが、誰もが不安な気持ちを心の奥底で抱えながらの会議参加となった。

 会期2日目の3月7日に米CBREが発表した不動産投資家調査(調査時点は2月前半)によると、344人の回答者のうち24%は「ユーロ圏の解体」を深刻な懸念の一つに挙げた。景気回復の兆しが見える米国でも地方経済は依然深刻で、米ラスベガスからの来場者の話によると、同市では今年に入って8人の不動産関係者の自殺が報じられたという。

 3日目の基調講演に登壇したドイツ政府の元外相、Joschka Fisher氏は、大ホールを埋めた約2000人の聴衆に対して、欧州が直面している危機の深刻さを改めて指摘し、「ギリシャのユーロ圏離脱は、EU(欧州連合)の崩壊につながる」と警告した。「自国通貨に戻るのは一見簡単に見えるが、それは完全な間違いだ。卵からオムレツを作れても、オムレツから卵は作れない」。

 Fisher氏は緑の党を率いて1998年の選挙に勝利し、2005年まで外相を務めた。現在はEU外務委員会に所属する。同氏は講演で、共通通貨ユーロが単なる経済問題でなく、2度の世界大戦の惨禍を経験した欧州が、経済的統合を通じて平和を獲得する手段であることを説明。さらに「本当の危機はギリシャ国債を介した信用危機、ユーロ・バンキング・クライシスであり、怠け者のギリシャ人に小切手を切るなという批判は的外れだ。『勝手にしろ』と同国を見捨てるのは全く間違っている」と強調した。

 同氏は、スペインのラホイ首相が自国の都合で財政赤字目標を対GDP比4.4%から5.8%へと緩和し、EU当局との約束をほごにしたことをチクリと批判。「ユーロ通貨の創設を決めたマーストリヒト条約の失敗は、経済政策の統合に関して強制力を欠いたこと。歴史上、戦争以外で国家の統合が進んだケースはまれだが、我々は困難な道を進む覚悟が必要だ」と、欧州の政治パワー結集に向けた持論を披露した。

ユーロ統合の維持を強調するFisher氏。聞き手はWall Street JournalのDeborah Kahn氏(写真:MIPIM)

会場隣の波止場から望む夕暮れ(写真:本間 純)

本間 純日経不動産マーケット情報

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