日本サステナブル建築協会(JSBC)は、不動産向けの簡易な環境性能評価手法を新たに提案する。エネルギーと温暖化ガス、水、資源利用と安全、生物多様性と敷地、屋内環境など、世界標準となりつつある主要な5項目を採用し、100点満点で建物を判定する。投資家やビル事業者、テナントなどが使いやすいようにした。近い将来、日本の建物の環境性能が、海外の市場でも共通指標で評価されることになりそうだ。

 新しい評価手法は「CASBEE(キャスビー)マーケット普及版」という。JSBCの「CASBEEと不動産評価検討小委員会」が2011年7月下旬に試行版を公開。新手法に対する国内外の意見を基に修正を加え、1年後に正式版を発表する計画だ。まず、オフィスビルでの利用を促し、住宅など他の用途でも順次、使えるようにする。

 日本における建物の環境性能評価ツールであるCASBEEの名を冠しているが、従来のCASBEEとは評価手法が異なる。試行版では、必須の5項目と加点の16項目によって不動産を評価することを提案している。これに従うと、例えば、エネルギー消費量が少なく、耐震性に優れ、耐用年数の長い建物が高く評価される。公共交通機関からの近さや自然災害リスク対策といった加点項目も設けた。

CASBEEマーケット普及版の評価項目のイメージ
(注)取材を基に日経不動産マーケット情報が作成

 点数に応じて、5段階の格付けを付与することを検討中だ。自主評価が可能だが、第三者による認証制度も設ける意向だ。従来のCASBEEよりも、短期間で安く認証が得られるような仕組みにすることを考えていく。

 不動産の環境性能指標を世界で共通化する議論は、国連環境計画(UNEP)が進めている。JSBCの委員会はこうした動きに呼応し、日本の制度が国際的に通用するものとなるよう取り組んできた。米国の環境性能評価システムであるLEED(リード)や、英国のBREEAM(ブリーム)などとの連携にも配慮した。国によって手法が異なっても、同じ不動産なら評価結果に大きな違いが出ないように工夫している。

 CASBEEマーケット普及版は、建築環境・省エネルギー機構(IBEC)が7月27日に開催する「第11回CASBEE公開セミナー」で披露する。

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編集:日経不動産マーケット情報/ケンプラッツ
2011年7月21日発行

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