計画時点の環境性能が高いビルはどれか――。東京都内の主要なオフィスビルについて、建物の断熱・遮熱性能の指標を集計したところ、中央区で建設中の「京橋3-1プロジェクト(仮称)」がトップになった。一方、建物設備の省エネ効率では「晴海センタービル」が1位。2011年に完成予定のビルでは、ソニーの新社屋「大崎西テクノロジーセンター(仮称)」と飯野海運の「飯野ビルディング」が上位に顔を出した。日経不動産マーケット情報とケンプラッツが調査した。

 2002年以降に計画された東京都区部の主要オフィスビルを対象に、建物の断熱・遮熱性能を単位面積当たりの熱負荷で表すPAL(パル)と、設備の省エネ効率を示すERR(イーアールアール)のデータをビルごとに比べた。いずれも設計段階における建物の環境性能を測る指標の一つだ。高い省エネ性能を備えた建物ほど、運用段階のエネルギー消費を抑えやすい。集計の対象としたのは東京都の建築物環境計画書制度で公表されているビル約220棟。2011年6月20日時点のデータを集計した。公表データには、計画段階のものと工事完了後のものがあるが、一緒に集計した。自社用に建設したビルもあれば、賃貸用途のビルもある。

断熱・遮熱性能が高いビルとは

 最も断熱・遮熱性能に優れたビルは、中央区京橋3丁目で建設中の京橋3-1プロジェクトだ。2位はカルピス本社、3位は三菱商事ビルディングだった。

■PALの上位10ビル(1m2当たりの年間熱負荷、単位MJ/m2・年)
(注)東京都の資料を基に編集部が作成

 建物の造り方を工夫して、外部からの熱負荷を軽減するとPAL(Perimeter Annual Load)の数値は低くなる。大規模なオフィスビルの基準値は1m2当たり年間300MJで、PAL値が低いほど建物にかかる熱負荷が少ない。すなわち断熱・遮熱性能が高いことを表す。PAL値が最も低かった京橋3-1プロジェクトの168.20MJは、基準値の300MJと比較すると44%も熱負荷を低減している。この値をPAL低減率と呼ぶ。

 PAL値を抑えるには、外壁や屋根の断熱強化、庇やブラインドによる日射の遮へい、遮熱性能の高いガラスの採用などが有効だ。ほかに、熱の出入り口となる窓の面積を減らす方法もある。建物のコアと呼ばれる、エレベーターや避難階段などが集った空間を日射の強い側に配置することも、執務空間の冷暖房負荷を下げることにつながる。