57億2000万円で戸田建設が落札

 環境配慮の取り組みは、配棟計画から始まった。エレベーターや階段など、建物のコアと呼ばれる部分を南西側に配置した。これによって執務空間への日射の影響を緩和し、建物の空調負荷を減らす。まず建物そのものの日射遮へい性能をできるだけ高め、次に設備で対処しようという、環境設計の基本に忠実な考え方だ。

 神田万世橋ビルには、ほかにも見どころがある。駐輪場やシャワー室を設けて、入居者のエコ通勤を奨励する。敷地面積に占める総緑化面積も約3割と高い。敷地内には旧万世橋駅舎の基礎を展示するなど、鉄道の歴史を踏まえた空間を設ける。建物の外壁には、赤れんがの高架橋を意識したデザインを施す計画だ。

 設計はジェイアール東日本建築設計事務所が手がけている。工事は競争入札の結果、57億2000万円で戸田建設が落札した。延べ床面積の1坪あたりに換算すると約66万円になる。工事の内容は事業ごとに異なるので単純な比較はできないが、環境配慮ビルのなかでは安い部類だ。環境への配慮と歴史性を反映したデザインによるコスト上乗せ分を約10%とみている。

----------------------------------------------------------------------

<ビルの概要>
名称:神田万世橋ビル(仮称)
所在地:千代田区神田須田町1-25(住居表示)
最寄り駅:地下鉄「淡路町駅」「小川町駅」徒歩3分
面積:土地3272.38m2、延べ床2万8498.65m2、賃貸可能床約1万5300m2
構造:S造(制震)
階数(地上/地下):20/2
駐車場:87台
事業主:東日本旅客鉄道
設計:ジェイアール東日本建築設計事務所
施工:戸田建設
運営:ジェイアール東日本ビルディング
工期:2010年6月~2012年12月
工事費(発注金額):57億2000万円

PAL低減率(計画時):28.93%、ERR:35.09%
運用段階の1m2あたりエネルギー消費量:未定
総緑化面積の敷地面積に対する割合:29.59%
LEED:LEED-CS(テナントビルの内装以外の部分、コアとシェルが対象)での取得を計画中
CASBEE:Sランク(環境効率を示すBEE値は3.3~3.5)→認証取得予定

東京オフィスビル環境データ集2011(CD-ROM)

東京オフィスビル環境データ集2011 (CD-ROM)

一般価格:36,750円(税込)
読者特価:29,400円(税込)
編集:日経不動産マーケット情報/ケンプラッツ
2011年7月21日発行

購入

菅 健彦