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【MIPIM】グリーンビルに新潮流、発電は蛇の鱗状の外壁で

2011/04/20

 グローバルな投資家の間でもSocially Responsible Investment(社会的責任投資)への関心が高まっていることを反映して、MIPIMの会場では年々グリーンビル関連の講演や展示が増えている。オランダのAPG、PGGMといった大手年金ファンドを筆頭に、欧州の機関投資家のなかには環境対策に関する独自の投資基準を策定しているところも多い。環境認証の不統一、物件不足などの問題は残るが、一部ではグリーンビルを主体にした不動産ファンド組成の動きもみられるようになった。事業会社では、グリーンビルの担当部門が従来の広報・マーケティングから、現場のプロパティマネジャーに移るケースが増えているという。

 またプロジェクトの内容についても、新築ビル単体の発表が多かった昨年までと比べて、地域一体開発や既存ビルの改修といった、より高度なチャレンジに取り組むものが増えている。会場でよく聞いたはやり言葉がESG(Environmental Social Governance)。つまり、これまでの環境対策が建物単位で行われてきたことの限界を把握して、周囲の都市計画や交通システムと統合的に開発することによって、より高い環境性能を実現しようとする取り組みだ。

 以下、会場で紹介されたプロジェクトからその一部を紹介しよう。

 

ニューヨークでグラウンド・ゼロに続く大型地域開発

 

 HudsonYards(ハドソンヤーズ)は、マンハッタン地区の中央、タイムズスクエアから約2kmの場所で予定されている地域総合開発である。一等地に残された10haもの鉄道操車場の空中権を利用するもので、市内では南部で開発が進むGround Zero(ワールドトレードセンター跡地)に次ぐ規模の大型開発となる。街区全体では、地域開発に適用される環境認証「LEED for Neighborhood Development」を、各ビルについてはLEED SilverまたはGoldを取得する予定という。

 操車場の上部に大屋根を掛け、その周囲を取り囲むように14棟の中高層ビルを建設する。37万m2のオフィスフロアと5000戸の住宅のほか、店舗、学校などが設けられる予定だ。建築面積を極限まで小さくする設計上の工夫により、敷地の半分を緑地として開放する。また建物の敷地を細分化することで、ビルとビルの間に数多くの風の通り道を確保。マンハッタンの大気汚染を緩和しつつ、ハドソン川の水辺にマイクロクライメート(独自の小気候)を作り出す。これらに加え、地下鉄、鉄道、遊歩道といったインフラを敷地内に取り入れ、車による二酸化炭素排出を減らす。電気と熱はガスを使ったコージェネレーションシステムで賄うしくみとした。敷地に降った雨は100%回収して冷暖房や灌漑(かんがい)、トイレなどに利用する。

 現在はマスタープランの段階で、敷地の3分の1ほどを占める第1期街区は2017年に完成する。全体では12~15年間の工期を見込んでいる。地権者はニューヨーク市交通局(Metropolitan Transport Authority)。開発主体は地元不動産会社のRelated Companiesと、カナダの年金基金が出資する同国のデベロッパー、Oxford Property Groupのジョイントベンチャーだ。マスタープランはKohn Pendersen Fox(KPF)が描いた。

HudsonYardsの完成予想図。左の青枠が1期、右の赤枠が2期以降の街区(資料:KPF)

 

既存ビル改修でCO2排出量89%削減を達成

 

 改修の難易度が高い既存ビルのグリーン化に、ハイテク技術を結集して取り組んだのがドイツ銀行本社ビルの改修プロジェクトだ。1984年にフランクフルトで完成したビルは、街のランドマークとして景観を形作っている。同行はビルのシンボル性を考慮し、建て替えの代わりに最新のエコロジー技術を導入して改造することを決めた。

 ツインタワーの躯体はそのままに、内外装を取り外してスケルトン化。ファサードは全面的に保温性の高いダブルスキン構造とし、自然換気にも対応した。雨水や排水をリサイクルして使用すると共に、冷暖房システムにも利用。ソーラーパネルと、エレベーターの再生ブレーキシステムによる発電も取り入れた。なかでもICカードを使ったプレゼンス・システムと組み合わせた省エネルギー化は特徴的だ。従業員が離席すると周辺の照度を落とすだけでなく、ドアのセンサーから人の出入りを把握してエレベーターを先回りさせるしくみを取り入れ、ビル全体での運転を効率化した。

 これらの取り組みの結果、冷暖房エネルギー67%、電力55%、水74%、CO2排出量89%の削減に成功している。建築廃材は分別して98%再利用した。これらの取り組みにより、ドイツ独自の環境認証であるDGNBに加え、リノベーションビルでは初となるLEED Platinumの取得を見込んでいる。さらに、会議フロアの移設や店舗・ホテル用の低層棟の増築などにより、旧ビルに加えて2割ほど有効床面積を増やすことができた。建物は2月に竣工しており、MIPIM最終日には、ドイツ銀行が傘下企業DWSのファンドに約6億ユーロ(約740億円)で組み入れてリースバックすることが発表された。

改装後のドイツ銀行本社ビルの外観(写真:ドイツ銀行)

 

蛇の鱗を持つビルがロンドンに登場

 

 会場に数多く登場したグリーンビルプロジェクトの中では、ロンドンの金融街シティに建設中のThe Pinnacle(ピナクル)が注目を浴びた。太陽電池を組み込んだ四角いガラスパネルで覆われた外観は、蛇の鱗のようだと話題を集めている。高さは288mに達し、2014年の完成時にはロンドンで最も高いビルとなる見込みだ。

 建物は64階建て、延べ床面積約13万m2の規模。太陽電池は41階以上の外壁パネル858m2に組み込まれ、135.5kWの電力を生み出す。鱗のような外壁パネルは、相互に端が重なる形で建物の曲面を覆っている。この重なった部分に生じるすき間から自然換気する仕組みだ。このファサードの内側にも壁があり、天候の変化から室内を守るとともに、空調コストの削減に貢献している。紙を筒状に巻いたようなデザインは自然の風を取り入れやすく、採光にも貢献する。

 設計はKohn Pendersen Fox(KPF)、デベロッパーはイスラム法に基づくシャリア準拠ファンドを運用する英Arab Investmentsで、総事業費は10億ポンド(約1400億円)に達する見込みだ。2006年にスタートしたプロジェクトは何度も資金難に見舞われ、現在は鉄骨が4階まで組み上がった状態で工事が中断している。しかし、2011年3月に入って複数のメディアが新たな中東マネーの調達成功を伝えており、工事再開が期待されている。

The Pinnacle(中央)の完成予想図(資料:KPF)
The Pinnacleのエントランス(資料:KPF)

 MIPIMは、デベロッパーや自治体が計画中のプロジェクトをアピールし、投資家やレンダーから資金調達の糸口をつかむ絶好の機会でもある。広大な展示会場では、目を引く環境性能を掲げるプロジェクトも多く見られた。なかには、スウェーデン・ストックホルム近郊の屋内スキー場、SkiPark360のように、自然エネルギーによる100%自給という野心的な計画を打ち出す計画も出てきた。太陽電池パネル、雨や雪解け水を利用した水力発電、風車、地熱などを組み合わせる計画で、2015年の竣工をめざしている。

 グリーンビルへの高い関心は、社会貢献やコスト削減のためだけでなく、近年閉塞感が漂っていた不動産投資の世界に、次々と斬新なアイデアで新風を吹き込んでくれるからだろう。

篠田香子=フリーライター,本間 純日経不動産マーケット情報

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