米国、欧州、アジアでは、投資マネジメントのグローバルプラットフォームをつくろうと計画を進めているところです――。木村惠司・三菱地所会長が語る。
(聞き手は田辺信之・宮城大学事業構想学部教授)


――海外投資のスタンスについて教えてください。

 安定的な法制度や税制度、商習慣をもっている米国や欧州が基盤になります。例えば金融都市のロンドンは投資家を歓迎するのでやりやすい。欧米を大事にしながら、これから需要が期待できる新興国も対象にしていきます。

 ベトナムでも始めましたし、中国でも一部、開始しました。ただ中国は、保有事業のように資金を長く寝かせるのは少しリスキーだと感じています。そういった国々では慎重に、回転型というか、早く投資回収できるように進めるつもりです。そうは言っても事業をやってみなければわからないことが、たくさんあります。

 候補としては、タイもあればインドネシアもあるかもしれない。日本企業の方からは、インドでも再開発をやってほしいと頼まれます。確かに将来性はあると思うのですが、今すぐ大規模にやることはできません。

 将来、丸の内モデルが展開できないかと考えています。そっくりそのままの開発はできないとしても、モデル2、モデル3のような展開ができないか。10年後に、そこまでできればいいですね。

木村惠司・三菱地所会長(写真:都築雅人)

――この10年の間に、不動産市場は金融市場の影響を強く受けるようになりました。一方で、金融化によって不動産事業に国内外からお金を集めるようになっています。どう対応していきますか。

 これまで上場REIT(不動産投資信託)や私募ファンドを組成してきました。今度は私募REIT(非上場オープンエンド型私募REIT)を立ち上げる予定です。私募ファンドは投資期間が2年から3年、長くても5年以内のものが多く、期限が来たら物件を売却することになる。そのときの市況次第では、ファンドのリターンがマイナスになる場合があります。もちろん、期限を延ばすことも可能ですが、リファイナンス(借入金の借換え)リスクを抱えてしまう。

 オープンエンドの私募REITならば、投資家にとって中長期的で安定的な運用ができるようになります。投資口価格は不動産価格に基づいて算定されるので、上場REITの投資口のように株式市況に大きく左右されることもない。開発側にとっては物件売却の出口が広がるメリットがあります。ただし、運営者に対する信頼が高くないと投資家がついてきません。

 それと、米国、欧州、アジアで、投資マネジメントのグローバルプラットフォームをつくろうと計画を進めているところです。昨年10月には英国に拠点を置く不動産投資マネジメント会社、ヨーロッパキャピタルグループを買収しました。2006年には米国のRGI(ロックフェラー・グループ社)に投資マネジメント会社を設けています。

 日本の三菱地所投資顧問を含めた3拠点をうまく回していきたいと考えています。「こちらにこういうファンドがあるから、そちらの投資家に紹介してはどうか」とか、「こちらの案件に魅力を感じないか」と打診する。地域を越えて投資家の交流を促すプラットフォームです。