90カ国から参加者を集めたMIPIM。屋外でも活発な交流が持たれた
90カ国から参加者を集めたMIPIM。屋外でも活発な交流が持たれた

 3月11日金曜日、今年22回目を迎えたMIPIMが閉幕した。対前年で7%増となる1万8400人余りが90カ国から参加し、不動産金融市場の回復傾向を実感させるものとなった。ファンドマネジャーなどの投資家層約4000人をはじめ、世界の不動産デベロッパー、設計事務所などが参加した。米国での不動産取引高の急回復を反映して、同国からの参加も例年になく増えた。

 MIPIMの政治色も強まり、100人以上の市長や行政、政治家など公的機関のトップが会場を訪れた。ロンドン市長のBoris Johnson氏、ニューヨーク大学のNouriel Roubini博士らが基調講演を行ったのは、不動産金融が世界の政治・経済との強い関わりを持つようになった背景によるものだろう。

 主催企業である仏Reed MidemでMIPIM責任者を務めるFilippo Rean氏は、最終日に行われた記者会見で、「今年はより国際的な参加者を得て、グローバル市場の動向を見極めながら前向きな戦略を構築する場となった。今後も不動産業界との結束を固めるとともに、公的機関との協力でMIPIMの重要性を高めていきたい」と語った。これに続き、Jones Lang LaSalle とCB Richard Ellis、Cushman & Wakefieldなどの大手不動産会社の代表が登壇し、グローバル市場の最新動向を発表した。

 Cushmanは、2011年の世界の不動産取引高は、北米と新興国の回復に先導されて5~10%近く伸び、4850億ユーロ(約56兆円)に達すると予測する。欧州市場では15%近い投資の増加を見込んでいる。中東の政情不安に起因する、資産家らの資金がロンドンに大きく流入しているのもその背景にあるようだ。一方、アジア市場には2010年、東京、上海などの主要都市を中心に約2940億ユーロが投資され、世界の取引の50%強を占めた。今年は中国の地方都市(セカンドティア・シティ)に注目が集まると予想する。

 MIPIMが開催されたカンヌからは地中海らしい青い空と海が望めるものの、時折さすような冷たい風に見舞われた。参加者にとっても、金融不動産市場の現状そのものともいえる、遅い春の天候だったのではないか。

篠田 香子=フリーライター