「テナントオフィスビルの省エネ還元研究会」は、テナントに省エネのインセンティブが働くような仕組みが必要だと提案した。賃料とは別枠になっている共益費についても、見直すべきだと指摘している。共用部のエネルギー費・運用費と、専用部の時間内空調費とが同じ共益費の枠で計上されており、中身を把握しにくい形になっていることが理由だ。

(注)「テナントオフィスビルの省エネ還元研究会」の資料を基に作成

 研究会はオフィスビル総合研究所(本田広昭代表)の呼びかけで2年前に発足。3月2日に東京都千代田区の丸ビルホールで開催した「テナントオフィスビルの新しい価値創造シンポジウム」で、研究成果を発表した。

 自社ビルでは所有者と利用者の利益が一致するのに対し、不特定のテナントが利用する賃貸オフィスビルでは、所有者と利用者の利益が必ずしも一致しない。クールビズの導入とともにオフィスの室温が高く設定され、テナントが我慢を強いられたり作業能率が落ちたりすることがある。省エネがテナントの利益に結びついていない現状に対する疑問から、研究を開始した。この間、テナント企業、ビルオーナー、設計事務所、コンサルタント会社、オフィス仲介会社などの専門家が議論を重ねてきた。

 省エネに関しては、エネルギー使用量とコストが連動し、エネルギーを減らした分だけコストが下がるようにするべきだと訴えている。これによってテナントの省エネ意識が高まり、ビルオーナーと一体となって納得ずくの省エネ活動が進められるという考えだ。

 明朗な会計には、エネルギー使用量をテナントごとに計量することが前提となるが、セントラル方式の空調設備のように個別に対応できないビルも多い。実測できない場合は、標準に対する温度の高低や時間の長短といった精算方法をあらかじめ決めておき、運用することも可能だ。将来は、空調を含めてエネルギーの計測ができるような建物設備にして、テナントが自由にコントロールできるようにすることが理想だと説明した。