丸紅大阪支社の植物工場
丸紅大阪支社の植物工場

 丸紅は2009年12月、土耕式の植物工場システム「ヴェルデナイト式植物工場システム」の販売を開始した。空きフロアを抱えるオフィスビルや、遊休化した倉庫・工場などを保有する企業やオーナーへの販売を見込んでいる。販売目標は初年度に1億円、5年後には40億円をめざしている。

 植物工場は、建物内で野菜などを育成するもの。キューピーや大戸屋などの食品関連会社だけでなく、セコムの子会社でセキュリティー機器の生産を手がけるセコム工業(本社:宮城県白石市)なども植物工場を保有している。これまでの植物工場は、液肥(肥料を溶かした水)を循環させ、栄養分や水分を植物に供給する「水耕式」が一般的だった。

 丸紅が発売した土耕式の植物工場システムは、ヴェルデナイトと呼ばれる有機人工土壌を採用している。ヴェルデナイトは、丸紅とヴェルデ(本社:厚木市)が共同で開発した。コケの一種であるピートモスに、粘土物質をコーティングしたものだ。丸紅によると、水耕式に比べて20%~30%安価に植物を生産できるという。水耕式では生産が難しかった根菜類や果菜類のほか、京野菜なども比較的、簡単に作ることができる。

 工場ではヴェルデナイトを入れたプランターを照明付きの多段栽培棚に置き、それを暗室化して20℃に温度管理した部屋に設置する。照明は植物の種類に合わせ最適な時間点灯することにより、年12回の収穫が可能となる。照明には蛍光灯を利用しているが、消費電力の少ないLEDの実用に向けて実験しているところだ。

 丸紅はテストケースとして、2009年11月に大阪支社が入っている丸紅大阪ビルの1室60坪を植物工場にした。すでに、大手メーカーが閉鎖工場の有効活用を目的に植物工場の導入を検討しているという。丸紅は多段栽培棚の単体での販売も計画している。例えば、レストランに植物工場を併設し、客が収穫した野菜を調理するといった使い方などを想定している。