アジアの不動産市場は2009年第2四半期中に回復の兆しを見せ、不動産への直接投資額は前期比41%増となった――。シービー・リチャードエリス(CBRE)アジアのリサーチ部門は、アジア主要都市の不動産マーケットについてのレポート「Asia Investment MarketView」2009年上半期号のなかで、このような結果を明らかにした。

 CBREは、市場が改善した要因の一つとして、不動産オーナーが目先の債務返済のため手持ちの不動産を売却したことを挙げている。特に、香港、シンガポール、台湾では、第2四半期の取引量が前期比でそれぞれ302%、297%、151%増と大幅に増加している。

 アジアの直接不動産投資では、日本が全体の投資額の44%を占めており、次いで中国が18%、香港が15%となっている。第2四半期にあった不動産取引事例のなかで最大規模のものは、AIGによるAIG大手町ビルの日本生命保険への売却で、取引金額は1155億円(約12億ドル)だった。商業施設では、大阪のそごう心斎橋店の取引価格379億円(3億8400万ドル)が最も高額だった。

 CBREは、アジアの経済は安定化に向かっているものの、「日本については、ハイテク産業への需要や自動車の輸出量が落ち込むなか、回復の速度は比較的ゆっくりとしたものになる」と指摘した。今後の不動産投資市場については、資産価格が安定し、売り手と買い手との価格差(ビッド・オファーギャップ)が縮小するにつれて、投資家も徐々に戻ってくるとの考えを示した。