名古屋市中心部では、REIT(不動産投資信託)やファンドによるビルや土地の取引が減少し、取引価格が低下している。本誌が市中心部で2008年6月~09年6月ころに取引された不動産を調べたところ35件が確認できた。昨年調査の77件から半減した。同エリアに詳しい複数の不動産会社の話をまとめると、平均的な取引価格はこの1年間で5割以上、安くなったようだ。

 急速なオフィス賃貸市況の悪化も、取引の低迷や価格低下に拍車をかける。同エリアではここ数年で、新築オフィスビルの供給が相次いだ。一方でトヨタ自動車を初めとする地元企業の経営が不振なことから、オフィスビルの空室率が大幅に拡大した。空室を解消するために、賃料を下げる動きが顕著になっている。

 オフィス開発を凍結する動きも目立つ。百貨店やブランドショップが林立する大津通り沿いでは、東急不動産のSPC(特別目的会社)がオフィス・店舗ビルの計画を中断。三菱商事も市況の悪化を踏まえ、SPCを通じて大通り沿いで進めていた2件のオフィスビル開発計画を見合わせた。希少性の高い場所にあるまとまった土地でさえ、有効活用されていない状況を嘆く声が、地元の不動産関係者などから聞こえてくる。

(詳しい記事を、7月20日発行の「日経不動産マーケット情報」2009年8月号に掲載しています)