不動産を投資対象とする年金や機関投資家が2年連続で減少し、今後1年間の不動産市場にも悲観的な見方が強い――。社団法人不動産証券化協会(ARES)が7月10日に公表した第9回「機関投資家の不動産投資に関するアンケート調査」で、このような実態が明らかになった。

 調査結果によると、実物不動産や不動産証券化商品に投資している年金の割合は31%で、前年の35%から4ポイント減少した。一般機関投資家は同81%で、前年の90%から9ポイントの減少となった。年金は3年前の2006年の水準に、一般機関投資家は6年前の2003年の水準に戻った格好だ。

 投資対象別にみると、年金では海外REITに投資しているところの割合が減少しており、実物不動産、J-REIT、不動産プライベートファンドなどの割合は昨年調査から横ばいとなった。一方で、J-REITへの投資に興味を持つ年金が21%に上るなど、不動産証券化商品への投資に一定のニーズが存在することもわかった。一般機関投資家ではJ-REITに投資済みと答えたところが60%に達したが、昨年の77%に比べると17ポイント減少している。

 全体の運用資産に占める不動産の割合については、年金が昨年の1.3%から1.2%へと低い水準のなかで減少した。一般機関投資家では1.3%で横ばいだった。投資対象として関心のあるタイプについて尋ねたところ、年金ではオフィスと商業施設の割合が減少し、賃貸住宅が増加した。一般機関投資家では、オフィスへの投資を想定しているところが依然として多い。今後の市場の見通しについては、地価、オフィス賃料とも下落するという見方が強かった。

 調査は総資産額140億円以上の厚生年金基金など562機関と、生命保険会社や銀行などの一般機関投資家195社を対象に実施し、合計で170の団体から回答を得た。調査結果の詳細はARESのウェブサイトで公表している。