調査会社のIPDジャパン(本社:千代田区)は6月25日、日本の不動産の投資収益に関する調査結果を公開した。2008年通期のトータル・リターンは、物件評価額が落ち込んだ影響で、2003年の調査開始以来初めてゼロ%になった。

 IPDでは賃貸収益率をインカム・リターン、物件価値の上昇率をキャピタル・リターンと呼び、両者の合計値をトータル・リターンと呼ぶ。トータル・リターンの落ち込みは、物件の鑑定評価額見直しに伴うキャピタル・リターンの下落を反映している。

 用途別のキャピタル・リターンはそれぞれ、オフィスで2.7%、住宅で7.4%、店舗で9.0%、物流施設で0.7%のマイナスになった。不動産市場での流動性低下を反映して、住宅と店舗の落ち込みが激しい。一方で、賃貸収益を示すインカム・リターンはいずれの分野でも安定しており、プラス4.8~5.2%の範囲に収まった。

 IPDのインデックスは借入前の不動産投資収益率を示す指標で、英国を皮切りに世界24カ国で提供されている。今回の日本での調査対象は2021物件で、このうちREIT(不動産投資信託)の保有物件が92%を占める。残りは保険会社などの機関投資家の物件だ。

 日本ではREITの銘柄ごとに決算時期が異なり、全銘柄の年次データがそろうまでに時間がかかるため、IPDは暫定値として月次インディケーターも公表している。最新の月次インディケーターは2009年2月時点のREIT開示資料に基づくもので、全セクターのトータル・リターンはマイナス3.0%となっている。