新生証券は8月29日、「新興不動産会社の信用リスク特性と今後の見通し」と題した分析レポートを公開した。同社債券調査部の宮川淳子シニアアナリストは、新興不動産会社の資本基盤が弱く、大手不動産会社と比較して負債依存度が高いことを指摘している。手元流動性の充足率も低く、金融市場の混乱に対する抵抗力が弱いと考えられる。

 調査したのは、民事再生手続き申請に追い込まれたアーバンコーポレイション、スルガコーポレーション、ゼファー、レイコフの4社に加えて、日本格付研究所(JCR)が6月に実施した緊急レビューの対象企業のうち5社。具体的にはアトリウム、ジョイント・コーポレーション、タカラレーベン、日本エスコン、日本綜合地所の各社だ。前期末の有価証券報告書を基に、各社の財務指標を比較している。

 緊急レビューの対象となった新興不動産会社5社の、純資産に対する有利子負債の倍率(デット・エクイティ・レシオ)は平均3.5倍。おおむね1.5倍程度に抑えられている大手不動産会社より負債に強く依存していることがわかる。

 新興5社の短期債務に対する手元流動性充足率は平均57.9%で、「破綻4社に比べれば高いものの、十分とは言えない水準である」と指摘している。この指標は手元流動性(現預金と、コミットメントライン未使用残高の合計)を、短期債務(短期借入金、コマーシャルペーパー、1年以内に返済・償還期限を迎える長期債務の合計)で割ったものだ。

 宮川氏は、「短期的な資金繰りは金融機関が借り換えに応じるかどうかに依存しており、黒字のまま民事再生手続きの申請に追い込まれる例も多い。また、今回の調査対象には親会社からの安定的な資金調達が見込める企業も含まれており、一概に数値的な指標だけで信用力は判断できない」と話している。