日経不動産マーケット情報では、独自に収集した売買事例を基に四半期に一度、分析レポートを掲載しています。2015年8月号のレポートのタイトルは「過熱気味の市場に一服感、先高感と不安が交錯」。好調が続く日本の不動産投資市場ですが、第2四半期(4月~6月)は取引件数、東証REIT(不動産投資信託)指数ともに前四半期を大きく下回る結果となりました。くしくも世界的には、ギリシャの債務問題と中国株の急落に翻弄され、グローバル経済の抱えるリスクが改めて意識されたこのひと月。日本においても過熱する不動産市場に警戒感を持つプレーヤーが増えており、将来のリスクを織り込む動きが顕在化しつつあるのかもしれません。

 さて、名古屋駅前では高層ビル3棟の建設が佳境を迎えています。賃貸オフィス床は合わせて6万坪に上り、名古屋で新規に発生する総床需要の1.7年分にも相当します。周辺の既存ビルオーナーは膨大な二次空室の発生に戦々恐々としていましたが、その影響は意外と小さく収まるとの見方が広がっています。その背景を8月号の特集「名古屋の不動産投資市場」で解説しました。記事では、名古屋中心部でこの1年間に取引された不動産も、地図と表で整理しています。名古屋市場の今を知る材料としてご活用ください。

 売買レポートは、積水ハウスが7割を400億円超で買い戻した赤坂ガーデンシティや、三菱商事がREIT組み入れ用に120億円でドイツ銀行から取得したGスクエア渋谷道玄坂、三井不動産が鹿島から300億円で取得した羽田の土地など、21案件を掲載しました。これらを含む取引事例166件を一覧表にまとめています。併せてご覧ください。

三上 一大