日経不動産マーケット情報2015年5月号の特集は、南仏カンヌで開催された世界最大の不動産コンファレンス、MIPIM(ミピム)の現地報告です。今年注目を集めたのは「Digital REvolution」。すなわちReal Estateにおけるデジタル革命です。欧米では不動産プロジェクトの資金をネットで募るクラウドファンディングなど様々な不動産関連ITサービスが生まれ、不動産ビジネスに大きな影響をもたらしているそうです。日本でもITやマーケティングのノウハウを武器に、不動産関連ビジネスに参入する新興企業が増えており、日立のようにビッグデータを活用して街づくりの投資効果を分析しようという動きもあります。旧態依然とした慣行が残る不動産業界ですが、今後、デジタル革命が業界を大きく変えていくかもしれません。

 四半期に一度掲載している売買事例分析では、2015年1月~3月に収集した取引事例を分析の対象としました。期間中の取引額は1兆4000億円を超え、リーマンショック後では最高額に。100億円超の取引は40件に上ります。記事では大型取引のランキングや、個別オフィスビルの推定利回りなどを掲載しました。幸先のいいスタートを切った2015年。今後の市場動向に注目です。

 今号では成約賃料調査も掲載しています。東京、神奈川、大阪の全28カ所を対象に、オフィス仲介のプロへのヒアリング調査を実施。直近のオフィス賃料の新規成約水準を明らかにしています。それによると、半年前よりも5%以上上昇したエリアは4カ所。その他24カ所はほぼ横ばいで推移しています。既存テナントの増額改定が相次ぐなか、新規成約に関しては上昇圧力に勢いが感じられない結果となりました。各エリアの水準を、ぜひ記事でご確認ください。

 売買レポートでは、ゴールドマン・サックスが388億円で持分を取得したグラントウキョウサウスタワーや、今治造船グループが250億円で取得した銀座の並木館など、注目の取引21件を掲載しました。これらを含む173件を一覧表にまとめています。当月は取引が多く、収録しきれなかったニュースが多数。ウェブサイトにはすべて掲載していますので、本誌と併せてご活用いただければと思います。

 冒頭で不動産業界におけるデジタル革命に触れましたが、ITは我々オフィスワーカーの働き方を大きく変えつつあります。日経BP社ではこのたび、今後のワークスタイルやオフィス戦略に関して情報発信する「ワクスタ」をオープンしました。今後のオフィス市場を考えるうえで、示唆に富む記事が盛りだくさん。ぜひのぞいてみてください。

三上 一大