五輪開催の「2020年」が一つのターゲットである東京に対し、名古屋では「2015年」と「2027年」が大きな節目として浮上しています。2015年は、名古屋駅前に3棟の大型ビルが誕生し、大量の賃貸床が供給される年。2027年は、リニア中央新幹線が名古屋―東京をわずか40分で結ぶようになる年です。オフィス市場に大きな影響が見込まれるなか、足元では国内外の投資マネーによって、取引が活発化しつつあります。この1年でオフィスの期待利回りは0.3ポイント低下しました。投資家はこれからの名古屋をどう見ているのか。日経不動産マーケット情報2014年8月号(7月20日発行)の特集でご確認ください。

 さて、名古屋の取引が活発化している背景の一つとして、東京での物件取得難があります。カネはあるのに投資先がない――。これが目下、不動産投資業界が抱える課題です。何でもいいなら物件は山とありますが、出口を見据えられる、収益の成長戦略が描けるといった案件でなければ、投資家の理解は得られません。先月のこのコラムで、受託残高減少を嘆く私募ファンドマネジャーの声をお伝えしましたが、よりコア投資を指向する上場REIT(不動産投資信託)でさえも「競争が激しくて物件が買えない」と言い、パイプラインサポート契約をしているスポンサーへのプレッシャーを強めています。8月号に掲載した今年第2四半期の売買事例分析では、「市況回復は踊り場に」とのタイトルでこうした市況の一端を解説しました。

 市場では、競争に残ったプレーヤーが100億円を超える大型投資を決めています。推定740億円で取引された国際赤坂ビルをはじめ、JR九州と三菱地所系私募REITによる千代田区二番町の大型オフィス投資、ドイツのファンドが180億円で取得した店舗ビルなど、17事例を今号の売買レポートに掲載しました。また、四半期に一度実施している成約賃料調査では、東京、神奈川、大阪のオフィスエリア28カ所の成約賃料水準を明らかにしています。

 日経不動産マーケット情報は8月26日(火)、特別セミナーを開催します。不動産・建設分野のアナリストとして人気を誇るJPモルガン証券の穴井宏和氏を講師に迎え、東京五輪が開催される2020年、さらにその先の不動産市場を読み解きます。五輪開催後のロンドンから予測できる東京の未来像とは。政府の成長戦略、カジノ解禁、リニア開業が不動産市場に与える真のインパクトとは――。不動産ビジネスに関わるすべての皆様の参加をお待ちしています。詳細はこちらをご覧ください。

三上 一大