「親会社は受託残高を増やせと迫るが、物件の供給はおろか紹介もしてくれない。投資家は『潮目が変わらないうちに早く運用資産を売れ』と言う。これでは残高が減る一方だ」。ある不動産会社系アセットマネジャーの嘆き節です。不動産投資市場では上場REIT(不動産投資信託)に加え、非上場型のREITも台頭。取得競争が激化し、投資家からより高いリターンを求められる私募ファンド勢は、新規の物件取得がままなりません。一部の財閥系や外資系を除いては、どこも似たり寄ったりの状況だといいます。

 日経不動産マーケット情報2014年7月号の特集は、大阪の不動産投資市場を取り上げました。「ファンドが競う投資機会、バーゲンハントは早くも終幕」というタイトルが端的に示すように、大阪でも取得競争が過熱しています。キャップレート4%台の店舗取引は珍しくなく、ブランドショップが集まる心斎橋では、土地単価が東京の表参道に迫る勢い。記事では、中心市街地で行われた主要取引113事例を、地図と表で紹介しました。さらに大規模ビルの開発プロジェクトや、テナントの成約状況もまとめています。大阪の今を知るのに必見です。

 7月号では、精鋭のアナリスト18人によるオフィス賃貸市況予測も掲載しました。心配された消費増税の影響はさほどではなく、足元の企業業績は好調。オフィス需要も堅調に推移しています。2015年末にかけて稼働率、賃料ともに上昇基調が続くとの見方が大勢を占めました。一方で、楽観論に冷や水を浴びせるちょっと気になる意見も……。専門家18人の見解を本誌でぜひご確認ください。

 好調な賃貸市場を象徴するように、今号の移転ニュース欄では、3000坪を借りるコニカミノルタビジネスソリューションズをはじめ、東急ハンズ、めがねのJINS、LINEを分離したNHN PlayArtと、注目の企業移転が続々。三菱地所は丸の内のテナント募集賃料を10%~20%上げることを決めたそうですが、賃料引き上げの波は周辺にも徐々に広がっていきそうです。

 売買レポート欄には、450億円のクイーンズスクエア横浜、130億円のプライムスクエア心斎橋、200億円超のモレラ岐阜、1030億円の東武デパート……と、大型案件が並びました。ほかにも注目取引の記事を20本以上掲載。これらを含む取引事例142件を一覧表にまとめています。

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三上 一大