2020年の五輪・パラ五輪開催に向けて、東京の街は大きく変わると期待されています。しかし不動産市場において具体的に何がどう変わるのかを問われると、意外と答えに窮するのではないでしょうか。日経不動産マーケット情報2014年1月号の特集では、こうした疑問にお答えしました。五輪関連の施設が集中する臨海エリアの開発動向を丹念に拾い集め、地図と一覧表にまとめています。調査の結果、2020年にかけて大規模マンションプロジェクトが目白押しで、1万5000戸が供給されることがわかりました。さらに1万7000人収容の選手村が整備され、大会後は一般販売される予定です。カジノを含む統合リゾート計画も進展すると見込まれ、同エリアでは交通インフラの整備が課題として浮上しています。

 特集ではさらに、不動産市場の分析に携わる専門家18人の協力を仰ぎ、7年後の市場の未来予測と成長に向けた提言をしてもらいました。「ビジネスの中心は丸の内から品川へ」「容積率緩和よりも産業振興が本筋」「オフィス賃料は2割~3割の上昇に」など、注目すべき意見がてんこ盛りです。各専門家へのインタビューはウェブサイトにも掲載する予定ですので、今後のビジネスのヒントとして、併せてお読みいただければと思います。

 年金積立金管理運用独立行政法人――。なんとも固い名前ですが、文字通り、公的年金の運用を手がける法人です。関連の公的年金を含めると、その運用資産は180兆円にも及びます。これまで保守的すぎる運用が議論を呼んでいましたが、国民の年金に対する不安がうずまくなか、いよいよ改革に向けて重い腰を上げました。1月号のトピックスでは、改革の動きを詳しく報告。不動産を含むオルタナティブ投資について、その有効性にまで踏み込んで解説しました。仮に運用資金の5%をこうした資産に振り向けたとしても、その額は9兆円に上ります。市場へのインパクトは計り知れず、同法人の動向からは目を離せません。

 売買レポートは、MGPA(現BlackRock)が東京と大阪で6物件に投資した事例や、英保険大手のAvivaがセキュアード・キャピタルとともに読売新聞所有の大型ビルを取得した取引など、17事例を掲載。オフィス市況トレンドでは、前出の専門家18人が今後1年半の賃貸市況を分析・予測しました。稼働率は2014年前半に大きく上昇し、その後、2015年前半にかけて賃料が上昇するシナリオとなっています。エリアごとの賃料予測も掲載していますので、ぜひご覧ください。

 なお1月号39ページに掲載しました通り、日経不動産マーケット情報では来年、年間購読料金を現行の15万150円から16万円(いずれも税込み)に改定させていただきます。今後より一層、発信情報の充実に努めて参りますので、引き続きご愛読のほどよろしくお願い申し上げます。

三上 一大