総務省地方財政審議会「地方法人課税のあり方等に関する検討会」が10月末にまとめた提言が、波紋を呼んでいます。中身を端的にいうと、「都道府県と市町村が徴収している法人住民税の一部を国の財源とし、地方交付税として地方に再配分するべき」というもの。地方税の国税化は、地方分権を進めてきた総務省の方針に反しますが、提言の背景には、企業立地の多寡によって地方自治体ごとの税収に大きな差があるにもかかわらず、来たるべき消費税増税によってさらにその格差が広がるとの懸念があります。消費税は国税と地方税で構成されています。現在は5%(国4%+地方1%)ですが、来年4月から8%(6.3%+1.7%)、再来年10月には10%(7.8%+2.2%)と上がる予定で、多くの消費地を抱える大都市ほど恩恵を受けることになります。

 検討会の提言に対し、都市インフラ整備や高齢化への対応で多くの財政需要がある東京都は猛反発。さらに、全国の政令指定都市でつくる指定都市市長会も反意を表明しました。しかし目先の地方交付税を期待する自治体が多いのもまた事実。来年度の税制改正に向けた議論がまもなく始まりますが、それとは別に中長期的な視点に立ち、国と地方のあり方についてのグランドデザインを描くことも忘れてはなりません。

 公共部門の財政逼迫が深刻化するなか、注目されるのがインフラストラクチャーへの民間資金の導入です。ずいぶん前からPFIは実施されていますが、2011年のPFI法改正で「コンセッション」と呼ばれる公共施設運営権の売却が可能になりました。日経不動産マーケット情報2013年12月号のトピックスでは、仙台空港を対象とした日本初の空港運営権売却を取り上げました。滑走路の運営そのものは不動産ではありませんが、併設されている旅客ターミナルビルや駐車場を一体的に運営し、トータルで収益拡大を図る点で不動産投資の側面を持ちます。宮城県知事は空港利用客の増加による地域経済の活性化に期待を寄せます。記事では、事業概要から価値評価に至るまで詳しく解説しました。仙台空港のコンセッションを主導する国土交通省担当者へのインタビューはウェブサイトでも連載していますので、併せてご覧ください。

 12月号の特集は、海外マネーの流入により再び活況を呈する福岡の不動産投資市場のレポートです。福岡ではオフィスの空室率低下が続き、さらに2035年まで人口が増加すると予測されています。投資に有利な材料がそろっており、この1年はメットライフアリコ、モルガン・スタンレー、アスコット・レジデンス・トラスト……と外資系企業・ファンドによる物件取得が相次ぎました。地元では適正な取引利回りに関して「5%の壁」という言葉があるそうですが、その壁を突破する高価格での取引も成立し始めています。特集では主な取引を一覧表と地図にまとめました。福岡に押し寄せるマネーのうねりを特集でご確認ください。

 四半期ごとに行っている売買事例分析は7月~9月の取引が対象です。芝パークビル、ティファニー銀座本店ビル、シェラトン・グランデ・トーキョーベイ・ホテルなど、2006年~2007年ごろに高値で取引された物件が再び取引され、話題となりました。地価の回復を背景に事業会社の資産売却が目立ち、REIT(不動産投資信託)による取得も引き続き活発。本誌が把握した取引件数は2007年当時の水準と並び、市場の活気が見て取れます。

 売買レポートは東急不動産が原宿のコープオリンピアアネックスを取得した事例や、森トラストが虎ノ門パストラル跡地の単独所有に踏み切った取引など15件を収録。企業移転ニュースでは、六本木ヒルズ森タワーをはじめとする六本木かいわいでの移転事例を中心に6件を紹介しています。

三上 一大