日本でのカジノ実現に向けた動きが風雲急を告げています。10月15日に始まった臨時国会に、超党派でつくる国際観光産業振興議員連盟が関連法案を提出すると目され、湾岸エリアでは具体的な開発地も取り沙汰されるようになりました。臨時国会の冒頭に行われた安倍首相の所信表明演説で改めて国家戦略特区の創設がうたわれましたが、いくつかの自治体がカジノ特区を提案するようです。いまやカジノは、ホテルやエンターテインメント施設を含む統合型リゾート(IR=integrated resort)を構成する時代。2020年の東京五輪招致が決まり、国が観光立国を推進するなかにあって、多くの観光客を引き付けるIRは時代のニーズに合ったものなのかもしれません。

 日経不動産マーケット情報2013年11月号の特集は「取引される街・銀座」です。IRとは異なりますが、銀座でもホテルの開発が相次いでいます。三井不動産はこのたび、銀座5丁目でマレーシアのHong Leong(ホンリョン)グループが開発中のホテルを運営すると発表。ほかにも常和ホテル、ダイワロイヤルなどのホテル開発プロジェクトが進んでいます。リーマンショック後は市況が一気に冷え込んだ銀座ですが、今年は300億円超のティファニー銀座ビルを筆頭に大型取引が復活。大規模商業施設の開発も動き出し、投資市場に活気が戻ってきました。再び脚光を浴びる銀座のいまを、特集でご確認ください。

 やっぱり不動産は面白い――。そう思わせてくれるのは、今号に掲載した収益向上事例研究です。賃貸マンションをオフィスビルに転換した「Shibuya INCS(シブヤインクス)」を取り上げ、バリューアップの具体的な中身を解説しました。事業の途上でリーマンショックに襲われたものの、的確な先読みと計画で見事に利益を上げました。アイデア次第では逆風のなかでも不動産ビジネスは成り立ちます。先ごろ日経BP社が発行した書籍「不動産ビジネスはますます面白くなる」にも通ずるものがありますので、併せてお読みいただければと思います。

 オフィス市況トレンドは、四半期ごとに実施している成約賃料調査です。東京22エリア、神奈川2エリア、大阪4エリアの成約賃料水準をつまびらかにしました。東京では夏以降、賃料が横ばい傾向ですが、空室率は緩やかに低下しつつあります。割安なビルの品薄感も強まっていることから、徐々に賃料が上昇を始めるかもしれません。

 売買レポートはティファニー銀座ビルや、推定130億円台で取引されたイオンモール柏、575億円の玉川ルネッサンスシティなど21事例を掲載。移転ニュースでは、鹿島の東京支店ビル建て替えに伴う移転など、7社の動向をお伝えしています。

三上 一大