日経不動産マーケット情報9月号では、5月に上場したCroesus Retail Trust(クリサス・リテール・トラスト)のインタビュー記事を掲載しました。同社がオフィスを置くシンガポールを訪れた本間副編集長は、現地で大勢の不動産関係者と会い、その熱気を感じてきたといいます。同国には昨年から今年にかけてザイマックス、トーセイ、東急リバブルなどが進出しましたが、以前から拠点を構える三菱商事、住友不動産といった大手企業も今年、現地の人員を倍増しました。さらに、森・濱田法律事務所やKPMGなど、法律や会計のプロも続々と日系企業向けの体制を強化しています。シンガポールで働く日本人弁護士は半年で30人増えたそうですが、この数字を見るだけで、その何十倍もの規模で現地のビジネスを拡大している日系の商社、スーパー、銀行、不動産会社の姿が想像できます。

 シンガポールでは法人税実効税率が日本の3分の1以下であることが多いのはよく知られたところですが、英Aviva Investorsのアナリスト、謝慧娟(Elisia Tse)氏によると、法制度面での充実や、香港に比べて約半分のオフィス賃料も魅力となっています。テレビや週刊誌ではシンガポールへの富裕層流出などがネガティブに取り上げられる機会も増えていますが、東南アジア進出熱の高まりを見るにつけ、同地域のハブ(軸)であるシンガポールへの関心も増すことはあれ減ることはなさそうです。

 クリサスは上場先として、投資制度が柔軟で国際投資にも一日の長があるシンガポールを選択したといいます。しかし、アジア最大の規模を誇るJ-REIT(不動産投資信託)市場も、活気の点では負けていません。2013年第2四半期(4月~6月)は10投資法人が実に3000億円ものエクイティを調達したことを、9月号の売買事例分析で報じています。これを受けて不動産取引も活発化しており、期間中に本誌が収集した売買事例は442件と金融危機前の水準に回復しました。大型の取引も相次いでいます。「どのような取引があったのか?」「利回りの水準は?」「床単価は?」といった疑問を同記事で解消してください。

 最近の通販会社の配送スピードには目を見張るものがあります。注文翌日に商品が届くなんてこともざら。背後には効率的なオペレーションを可能とする最新鋭物流施設の存在があります。そんな大型物流施設の開発動向を、9月号のトピックスで解説しました。2013年は1都3県で150万m2に及ぶ賃貸物件が供給されます。過去最高だった2008年と同水準の大量竣工にもかかわらず、通販会社や3PL(サードパーティーロジスティクス)事業者の旺盛な需要に支えられ、リーシングは順調に進んでいるようです。同記事では、テナントを含む各開発プロジェクトの概要を地図と表にまとめましたので、ぜひご覧下さい。

 東京では大型オフィスビルのリーシングも好調です。2012年のオフィス大量供給で需給バランスの悪化が危ぶまれましたが、賃料に先高感が出てきたことから、既存ビルの大型空室は徐々に解消に向かっています。9月号のオフィス市況トレンドでは、具体的なテナントの動きを追いながら、各ビルの最新のリーシング状況を浮き彫りにしました。注目ビルの動向も解説しています。オフィス市況の今を把握する材料として必見です。

 売買レポートは、アンジェロ・ゴードンが大幅リニューアル後に92億円で売却した赤坂ビジネスプレイスや、大阪の心斎橋近くでニトリなどが開発用地5600m2を75億円程度で取得した例など、18の取引を報道。企業移転ニュースやダイジェストといった定期コラムも最新情報満載です。

三上 一大