日経不動産マーケット情報2013年6月号の特集は、毎年恒例となった「これからできる大規模オフィスビル」です。東京23区で計画されている延べ床面積1万m2以上の大規模ビルを調査しました。その結果、2013年は供給が落ち込むものの、2014年以降は継続的に毎年100万m2台の開発が予定されていることがわかりました。総延べ床面積は809万m2。丸の内ビルディングの実に50棟分に相当します。特集では地図を使い、どこでどのような開発が行われるのかをわかりやすく解説しています。各プロジェクトの詳細データについては、別途発行するCD-ROMにも収録しますので併せてご活用ください。

 さて、調査でわかった809万m2という数字。偶然にも2009年の調査とまったく同じ結果となりました。違うのは計画棟数で、2009年調査では138棟でしたが、今回調査は104棟と大きく減りました。ここから読み取れるのは、プロジェクトがそれだけ大規模化しているということです。単純に平均すると、1棟あたりの面積は3割以上拡大している計算になります。ビルの大型化はオフィスレイアウトの自由度が増すといったメリットがある一方で、一気に増加したオフィスワーカーによって毎朝、駅出入り口に大行列が発生するなどという負の効果を生み出すこともあります。ビルの大型化については、街づくりの観点からもその影響を検証してみたいところです。

 6月号では、新たにスタートする「耐震・環境不動産形成促進事業」も解説しました。資金調達がネックとなって改修や開発が進まないプロジェクトを国が支援する制度で、このようなプロジェクトに対して複数の官民ファンドを組成し、国が合わせて350億円を出資します。民間からの出資を含めると総投資額は1200億円~1300億円に上るとみられ、良好な街づくりに一役買いそうです。7月に公募を開始するとのことですので、関心のある不動産事業者はぜひ記事をご確認ください。

 四半期ごとに掲載している「売買事例分析」は1月~3月が対象。期間中は1111億円のソニーシティ大崎や507億円のパナソニック汐留ビルなど大型売買が相次ぎました。本誌が報道した売買のうち金額がわかるものだけでも、その総額は1兆1427億円に上ります。前年同期の約2倍、リーマンショック以降では最高の水準となりました。主役はJ-REIT(不動産投資信託)ですが、テレビで「円安で外国人観光客が増加…」と盛んに報道しているのと同様、不動産市場にも海外からの資金流入が進んでいます。

 その様子は今号の「売買レポート」でも明らか。5月10日に上場したシンガポールREIT、Croesus Retail Trust(クリサス・リテール・トラスト)が日本の商業施設4棟を約500億円で取得した事例や、米GreenOak(グリーンオーク)が60億円~70億円で都内のオフィス3棟を取得した事例、欧州・アジアで投資を手がけるMGPAによるビル2棟取得など、24本の記事を収録しました。これらを含む取引119件は「売買事例一覧」にまとめています。

三上 一大