不動産市場の動きがますます活発になっています。大幅な人員削減でポジションを手じまうかのように見えた外資系プレーヤーが再び日本の不動産市場で動き始め、新たに不動産事業に進出する国内企業も出てきました。長らく市場に滞留していた物件にも相次いで買い手が付いています。不動産業向けの銀行融資は順調に回復(グラフ参照)。日本銀行の異次元緩和で供給されるマネーがどこまで不動産市場に流れ込むかはわかりませんが、不動産会社からは「すでに顧客に販売する物件を確保できていない」との焦りの声が聞こえてきます。

 そうしたなか注目を集めているのがヘルスケア関連施設。5月号の特集では、いずれ投資規模が1兆円を超えるとの見方もあるヘルスケア投資市場について解説しました。「なぜ注目を浴びるのか」「日本での投資実績は」「オペレーターの賃料負担力は」「利回りはいくらか」といった10の設問に対し、多くの専門家への取材を通じて得られた回答を載せています。日本で多くの投資実績を持つシンガポールREIT(不動産投資信託)の分析も行いました。併せて見逃せないのは、ヘルスケアREITの立ち上げを視野に入れている新生銀行の藤村隆ヘルスケアファイナンス部長へのインタビューです。投資市場の現況やREIT立ち上げの意義などを率直に語ってもらいました。インタビューの全文は4月22日と23日の2回に分けて、本誌ウェブサイトのニュースとしても掲載します。

 もう一つの特集は、80カ国から2万人の参加者を集めた国際不動産コンファレンス、MIPIM(ミピム)の現地レポートです。フランス・カンヌで毎年3月に開催されており、本誌の参加は今年が5回目。会期中は公式なものだけでも70余りの講演やパネルディスカッションが設定され、2万m2を超えるスペースでの各種展示や、数多くのプライベートパーティーが催されました。会場全体をユーロ圏崩壊の不安が覆っていた昨年とは一転、今年は明るい雰囲気が支配し、投資家が自信を取り戻しつつあるとのこと。アジアへの関心は引き続き高いようですが、欧州ファンドは日本についてどう見ているのでしょうか。その答えは本特集でご確認ください。

 売買レポートは、三井不動産の私募REITによるタワーマンションの取得や、ゴールドマン・サックスがオフィスビル3棟を取得したケースなど16本を掲載。これらを含む取引138件を売買事例一覧に収録しています。オフィス市況トレンドは成約賃料調査です。東京22エリアと神奈川2エリア、大阪4エリアの成約賃料水準を明らかにしました。このほか、加速する海外不動産投資の動きをまとめた解説記事も掲載しています。

三上 一大