最近、マンション用地の仕入れを抑制する中堅・中小デベロッパーが増えています。理由は建築コストの増大。東日本大震災からの復興事業が本格化するにつれて型枠工が東北に流れ、首都圏ではRC(鉄筋コンクリート)造の施工がままならないと聞きます。来年予定されている消費税増税を前に駆け込みでプロジェクトを進めたいところですが、建設会社から見積もりを取ろうにも、「型枠工を確保できないので、将来の見積もりは出せない。今時点の参考価格なら…」と突っぱねられる始末。さらにアベノミクスで地価上昇を期待した地権者が土地の売り惜しみを始めており、デベロッパーは建築コスト増大分を開発用地の仕入れで薄めることが難しくなっています。もちろん、これらのコスト増を最終的に販売価格に転嫁できれば、デフレ脱却に向けた正の回転となるのかもしれませんが、しばらくは不透明な情勢が続きそうです。

 首都圏で続く東日本大震災の余波ですが、現地ではどうなっているのでしょうか。日経不動産マーケット情報2013年4月号では、震災から丸2年を経た仙台の不動産投資市場を特集しました。仙台では、被災者や復興関連企業の流入で住宅需要が大量に発生し、需給が逼迫しています。それを見込んだ投資も活発化しており、キャップレート(利回り)の低下が顕著です。オフィスやホテルについても、この2年間で大きな変化が生まれました。変わりゆく仙台市場の今をレポートしていますので、ご確認ください。

 売買レポートでは、1111億円のソニーシティ大崎、507億円のパナソニック東京汐留ビル、350億円のグラントウキョウサウスタワーと大型の取引が並びました。図らずも3物件とも買い主は三井不動産系で、積極的な投資姿勢が見受けられます。ほかにも、新生銀行の個人投資家向けファンドによる老人ホームの取得、ハザマとの合併が決まった安藤建設の本社売却など、注目の取引24事例を収録しました。

 昨年のビル完成ラッシュで需給バランスの悪化が懸念されたオフィス市場でしたが、2013年に入って新築大型ビルの稼働状況が大きく改善しています。2012年竣工の物件に限れば、テナント内定率はおよそ8割にまで上昇したことが本誌の独自調査で明らかになりました。調査結果は今号のオフィス市況トレンドに掲載しています。2014年4月までに完成する大型ビル43棟について、個別にテナント決定状況を明らかにしており、必見です。

 ここまでお読みいただいた皆様の多くは、「全体的には不動産市場に明るさが戻っている」とお感じになったことと思います。こうした印象を、ニュース記事に含まれるキーワードや文脈で定量化したらどうなるでしょう。野村総合研究所の谷山智彦主任研究員はその点に目を付け、このたび「不動産市場センチメント指数」を開発しました。日経不動産マーケット情報が2002年の創刊から今までに発信したニュース記事はおよそ1万2000本。これらをコンピューターで解析し、月次でインデックス化しています。その結果は……。今号で谷山氏にご解説いただきましたので、ぜひご覧ください。

三上 一大