「専門家18人の見方がほぼ一致、2013年後半に本格的な賃料上昇へ」――。なんとも心躍るタイトルではありませんか? 国内を代表する不動産市場分析の専門家に、東京都心のオフィスビルの賃貸市況について予測してもらった結果です。長く続いたオフィス賃貸市況の悪化も、ようやく出口が見えつつあると言えます。日経不動産マーケット情報は2013年1月号から、これまでの「オフィス移転・賃料調査」を「オフィス市況トレンド」へと衣替えしました。上記の企画はその第一弾。専門家18人それぞれのコメントや、主要エリアの1年後の成約賃料水準の予測も載せました。このコーナーでは今後、東京や大阪の成約賃料一斉調査をはじめ、その時々に応じた賃貸市況レポートを掲載していきますのでご期待下さい。

 不動産証券化市場が爆発的に拡大していたころ、不動産ファンド業界の花形はソーシング(投資案件発掘)やアクイジション(仕入れ)の担当者でした。大型のトロフィーアセットを強気の価格で次々とファンドに組み入れ目玉が飛び出るようなボーナスをもらった外資系社員も多く、そうした人たちの資産運用に特化したアドバイザリー会社さえ現れるほどでした。期中のアセットマネジメントを手がける担当者からは「出口のことも考えずに買うからなぁ…」とのぼやき節をよく聞かされたものです。

 ところがリーマンショック後は、どちらかというと地味な存在であったアセットマネジャーが脚光を浴びています。経済活動や不動産市況が冷え込むなか、保有物件の品質を高め既存投資家や銀行の信頼を得ることが、以前にも増して重要なテーマになったのです。今号では投資案件の収益向上事例として、岐阜県にあるモレラ岐阜のケースを取り上げました。アセットマネジメントを手がけるMGPA Japanと、プロパティマネジャーであるザイマックスキューブは、テナントの入れ替えを含む大規模なリニューアルを実施。2013年は2011年に比べ、実に30%増の施設売上高を見込むそうです。その詳細レポートは必見です。

 また国際的な不動産コンファレンス、MIPIM Asia(ミピム・アジア)の現地レポートも掲載しています。本誌の本間純副編集長がモデレーターとして参加したJ-REIT(不動産投資信託)セッションでは、日本市場の健全性をアピールするとともに制度改革についても解説し、参加者の高い関心を呼びました。世界の機関投資家やファンドマネジャーの中国熱はややトーンダウンし、コア投資市場としての日本の魅力が再確認されていることが、レポートからは伝わってきます。

 売買レポートでは、英国のAviva Investorsとセキュアード・キャピタル・インベストメント・マネジメントによる渋谷でのオフィスビル投資や、大和証券オフィス投資法人が96億円で取得した新宿のビルなど、21事例を載せています。2013年も引き続き、日経不動産マーケット情報をよろしくお願い申し上げます。

三上 一大